M&Aで売れない会社とは?会社売却しにくい企業の特徴を7つ解説

株式会社社長の専門学校
『会社売却2.0/
М&Aセルサイドアドバイザー協会』
代表 田中英司(たなかえいじ)

  • M&Aのプロアドバイザーかつ現役経営者。
  • ゼロから創業した会社を上場させ、買手・売手の両方を社長として経験。
  • 上場企業を引き継いだ後、複数社の会社を経営。
  • M&Aアドバイザーとしても、年商数千万~数十億のM&Aを成功に導く。

会社売却を考えるとき、「売れやすい会社」と「売れにくい会社」があるのは事実です。

もちろん、絶対に売れないと断言できるわけではありません。
ただ、一般論として買い手がつきにくい特徴というものはあります。

今回は、会社売却しにくい会社の特徴を7つに分けてご紹介します。
あわせて、「どういう会社なら売れやすいのか」という視点でも解説いたします。

M&Aで売れない会社とは?

会社売却しにくい
企業の特徴を
7つ解説

会社売却2.0

企業価値の見方にはいくつかありますが、
資産やキャッシュなど、どの観点で見てもマイナスであれば、買い手にとっては投資しづらい会社になってしまいます。
そのため、基本的には売却のハードルが高くなります。

ただし、例外的に売れるケースもある

たとえば、明らかに回復の見込みがある場合です。
KPIが整理されていて、売上が積み上がっていて、「今期は仕込みの時期で、来期以降は利益が伸びる」という筋道が見えている会社は、評価が変わります。

また、規模が大きい会社も別です。
たとえば、関西エリアに200店舗ある会社が、直近で一時的に悪化しているだけであれば、「この規模の出店網を一から作るのは難しい」「やり方次第で一気に回復できるのではないか」と考える買い手が現れることがあります。

あるいは、特定分野の技術や独自性がある会社も同様です。今はまだ十分に花開いていないけれど、買収後にテコ入れすれば伸びると判断されれば、評価される可能性があります。

結局は「回収できるかどうか」がすべて

買い手にとって、結局は投資と回収の話になります。つまり、投じた資金を回収できる見込みがあるかどうかが判断の軸になります。

少し身もふたもない言い方に聞こえるかもしれませんが、ビジネスである以上、投下した資金に対してリターンが見込めなければ成立しません。
上場会社でも、ファンドでも、個人でも、基本は同じです。 ですから、回収見込みが立たない会社は、やはり売れにくい。
特に債務超過の会社は、
・規模がある
・強みや独自性がある
・回復のストーリーが描ける
といったプラス材料がない限り、売却はかなり難しいと考えておくべきです。

会社売却2.0

これは少し分かりにくいのですが、たとえば非常に高額な不動産を持っていて、その上で事業をしている会社をイメージすると分かりやすいです。

たとえば、

  • 土地:10億円
  • その上で店舗運営
  • 年間利益:5,000万円

という会社があったとします。

売る側からすれば、「土地が10億円あるうえに、事業としても利益が出ているのだから、その両方を足して評価してほしい」と思いたくなります。
その気持ちはよく分かります。

■ しかし、買い手の見方は違う

買い手は“投資額に対していくら回収できるか”で見る

12億円(10億円+将来価値)で買った場合

  • 年間利益:5,000万円
  • 回収にかかる年数:約24年

となります。これでは「投資効率が悪い」と判断されやすいのです。

一方で、その10億円の土地が賃借物件で、家賃を払ったうえで年間5,000万円の利益が出ているなら、将来利益を評価しやすくなります。

事業用資産の価値は、利益の中に織り込まれている

会社売却における企業価値評価では、事業に使っている土地や建物の価値を、そのまま足し算できないことがあります。

なぜなら、その土地や建物を使って利益を生み出している以上、その資産価値はすでに利益の中に織り込まれていると考えるからです。

そのため、企業価値は将来のキャッシュフローや、利益に対するマルチプルで計算されます。

  • 利益 × 数年分(マルチプル)で評価されます。
  • 例:5,000万円 × 8倍 = 4億円 土地10億円の価値観とは大きくズレてしまう

    利益が今後伸びるなら7倍、8倍になることもありますし、伸びないなら2倍、3倍程度になることもあります。

良い会社でも、売却が難しいことがある

これは「事業が悪い」という話ではありません。
むしろ、素晴らしい資産を持ち、素晴らしい事業をしている会社です。

ただ、売却価格の考え方が、売り手と買い手で合いにくい。
そのため、非常に売りにくい会社になることがあります。

会社売却2.0

たとえば、同じように年間1億円の利益が出る会社が2社あったとします。

  • A社:資産が小さく、負債も少ない
  • B社:総資産20億円、在庫も多く、負債も大きい

この2社なら、一般的にはA社のほうが買いやすいと判断されます。

運転資金が重い事業は買い手が慎重になる

総資産が大きい会社というのは、裏を返せば、運転資金がたくさん必要な事業であることが多いです。

在庫を多く抱える会社や、設備投資が大きい会社は、利益が出ていても、その利益を維持するために多くの資金を必要とします。 そのため、買い手からすると「利益はあるが、資金負担も重い会社」に見えます。

  • 投資後も資金負担が重い
  • 追加資金が必要になる可能性がある

買い手は慎重になり、結果として売却しにくくなることがあります。

会社売却2.0
利益があっても、手元のお金がなかなか増えない事業です。

たとえば、1億円を貸して年10%の利回りだとします。
利益としては年間1,000万円見込めるかもしれませんが、元本1億円を回収するまでには長い時間がかかります。

しかも、その間に費用もかかりますし、利益が出れば税金もかかります。
つまり、利益計算上は黒字でも、実際のキャッシュは重く沈んでしまうのです。

中小企業では資金調達面でも不利になりやすい

大手の金融会社であれば、低い調達金利で市場から資金を集め、それを運用して利ざやを取ることができます。
しかし、中小企業や中堅企業では、そのような資金調達は簡単ではありません。

結局、自己資金をかなり使って回す必要があり、資金効率が悪くなります。

たとえば、自動車販売で自社ローンを扱うケースもそうです。
100万円で仕入れた車を150万円で売っても、その150万円をすぐ回収できるわけではありません。
分割で少しずつ回収するので、利益は見えていても、キャッシュが寝てしまいます。

会社売却では、最終的にキャッシュフローが非常に重要です。

どれだけ会計上の利益が出ていても、現金が回ってこない事業は、買い手からすると魅力が落ちます。
そのため、一般的な中小企業のファイナンス事業は、売りにくく、企業価値もつきにくい傾向があります。

会社売却2.0

買い手は「本当に引き継げるのか」を見ている

オーナーが自分の会社として100%コミットして経営している状態と、株を売却して別の立場になる状態では、意味がまったく違います。

買い手からすると、「このオーナーが株を売ったあとも、今までと同じ熱量で働いてくれるのか」という疑問が当然出てきます。
たとえ「残ります」と言われても、以前と同じ働き方になるとは考えにくいのです。

ですから、オーナー依存度が高い会社は、その時点で警戒されやすくなります。

売るために必要なこと

売るなら、引き継ぎ設計が必要になる

もちろん、オーナー依存度がゼロの会社などほとんどありません。
社長自身が信用力の中心になっている会社も多いです。

ただ、売却を考えるなら、オーナーがいなくても回る部分を増やしていく必要があります。
あわせて、引き継ぎ期間を長めに取る、一定期間は業務を継続してもらう、売却後も合理的にやる気を持って関われる処遇を設計する、といった工夫も大切です。 売却は、株を渡して終わりではありません。

「どう引き継ぐか」まで
設計することが必要

オーナー依存度があまりにも強い会社は、その設計が難しく、売却も難しくなります。

会社売却2.0

なぜ売りにくいのか具体例

買い手からすると、わざわざ買う理由が弱い

たとえば、飲食店を5店舗持っている会社と、関東エリアで70店舗ある会社では、買い手の見え方が違います。

  • 70店舗ある飲食チェーン
    → エリア展開・統合・ロールアップ投資に使える
  • 地方で1〜2店舗の飲食店
    → 誰が買うのかイメージしにくい

近所の事業者が引き継ぐようなケースはあり得ます。
ただ、それは一般的なミドルサイズ以上のM&Aとは別の話です。

例外(売れるケース)

小さくても、伸びしろがあれば話は変わる

一方で、小さな会社でも売れるケースはあります。
それは、今後の伸びしろが明確なときです。

たとえば、まだ4期目くらいで、これまで赤字や小幅な利益だった会社が、直近予測で一気に4,000万円規模まで伸びそうだ、というようなケースです。
その場合、「これは面白い」「将来の投資価値がある」と見てもらえることがあります。

つまり、小さいこと自体が問題なのではなく、小さくて、どこにでもあって、伸びしろも見えにくい会社が売りにくいのです。

会社売却2.0

なぜ売れにくいのか

高すぎる価格を設定すると、会社は一気に売りにくくなります。

価格を下げれば買い手候補は増える

会社売却は、結局は投資とリターンの話です。
シナジーの期待はあっても、基本は投資採算が合うかどうかで見られます。

そのため、

  • 価格が低い → 投資しやすい → 買い手が増える
  • 価格が高い → 投資効率が悪く見える → 買い手が減る

これは非常に分かりやすい関係です。

ただし注意点

安く出してすぐ手が挙がるのが正解とは限らない

会社は1つしかありません。
同じ商品を何個も作って大量販売するビジネスとは違います。

  • 安く出してすぐ買い手がつく
    → 「安すぎた可能性」もある

売却では、売りやすさと価格は強く相関します。
その前提を理解したうえで、できるだけ高い価値を目指すのか、早期成約を優先するのかを決める必要があります。

よくあるズレ

現実的な価格目線が合わないと、受託自体が難しいこともある

例:

  • 適正:1.5億円
  • 頑張って:1.8~2億円
  • 売り手希望:3億円以上

このようにズレると、
現実的に売却が難しくなる

もちろん世の中に絶対はありませんが、現実的な目線から大きく離れると、支援そのものをお断りせざるを得ないこともあります。

よくあるズレ

会社の成長によって、価格が上がることもある

一方で、時間をかけることで価格が上がるケースもあります。

実際、なかなか買い手がつかなかった案件でも、決算を1期見直したことで利益が改善し、評価が大きく変わったことがあります。
価格自体は上げたのに、かえって割安感が出て、一気に買い手候補が増えることもあります。

一定の規模があり、利益のラインを超えてくると、希少性が一気に高まるのです。
そうなると、取り合いになることもあります。

つまり、価格は単独で決まるものではなく、規模、利益、成長性、希少性との組み合わせで決まるということです。

特別な準備より、まずは普段どおり「いい会社」をつくること

ここまで、売れにくい会社の特徴を7つお話ししてきました。

ただし、何度もお伝えしたいのは、これはあくまで一般論だということです。

たとえば、債務超過でも規模があれば売れることがあります。
小さくても、今後の伸びが強ければ売れることがあります。
資産が重い会社でも、その資産に大きな戦略価値があれば評価される可能性はあります。

結局のところ、買い手が「投資して回収できる」と思えるかどうかです。
会社売却とはそういう現実の上に成り立っています。

売れやすい会社とは、
結局“いい会社”である

売れにくい会社の特徴を7つ解説してきましたが、裏を返すと、売れやすい会社とは「いい会社」です。

売るためだけに会社を作る必要はありません。
しかし、いい会社を作っていれば、結果として売りやすくもなります。

  • 現状の収益性がある
  • 将来の成長が見える
  • キャッシュフローがしっかりしている
  • オーナー依存が過度ではない
  • 一定の規模や希少性がある
  • 価格が現実的である

こうした条件がそろうほど、売却の可能性は高まります。

会社売却をするかどうかに関係なく、日頃から「いい会社を作る」という視点で経営しておくことが大切です。
そして、もし売却を検討しているなら、売れるタイミングでしっかり準備して取り組むことが重要です。

「自社は今の状態で売却できるのか」「まだ早いのか、それとも今が動くべきタイミングなのか」と迷われる方も少なくありません。
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