株式会社社長の専門学校
『会社売却2.0/
М&Aセルサイドアドバイザー協会』
代表 田中英司(たなかえいじ)
- M&Aのプロアドバイザーかつ現役経営者。
- ゼロから創業した会社を上場させ、買手・売手の両方を社長として経験。
- 上場企業を引き継いだ後、複数社の会社を経営。
- M&Aアドバイザーとしても、年商数千万~数十億のM&Aを成功に導く。
2025年11月28日、金融庁による「地銀子会社のM&A仲介解禁」に関するニュースが話題になりました。
このニュースを見て、「銀行がM&A仲介をするとはどういうことなのか」「会社を売りたい経営者にとってプラスなのか」と気になった方も多いのではないでしょうか。
地方銀行は、地域企業の経営状況や後継者不在の課題を把握しやすい立場にあります。そのため、事業承継の支援役として期待される一方で、売り手にとって本当に有利に働くのかは、慎重に考える必要があります。
この記事では、地銀子会社のM&A仲介解禁とは何かを整理したうえで、売り手オーナーにとってのメリット、注意したい懸念点、どのように向き合うべきかをわかりやすく解説します。
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目次
M&A仲介解禁とは?
事業承継を
地方銀行・金融機関に
相談する際のポイント
■:地銀子会社の
M&A仲介解禁とは何か
金融庁のニュースを見て、「そもそも解禁とはどういう意味なのか?」
「これまで銀行は
M&A仲介ができなかったのか?」
と疑問に思われた方も
いるかもしれません。
まず前提として、銀行はこれまでもM&Aに関わること自体は少なくありませんでした。
ただし、その関わり方については、慎重に制限されてきたという背景があります。
なぜかというと、銀行は立場が強いからです。
特に、会社と銀行の間には、構造的なパワーバランスがあります。たとえば、現金を多く持っている優良企業であれば、銀行にそこまで頭を下げなくてもよい場面もありますが、実際にはメインバンクがあって、一定程度その会社を支えているという関係性があることが少なくありません。
そうした中で、銀行がその強い立場を使って、自社の取引先に対し「こういうサービスをする会社を作ったので、そこから商品を買ってください」「このサービスを受けてください」といった形で働きかけることがあれば、問題が起こり得ます。
極端にいえば、「やってくれないならお金は貸しませんよ」といった圧力につながる恐れもあるためです。
そのため、銀行の子会社には業務内容について一定の制約が設けられてきました。
今回の「解禁」とは、そうした規制を徐々に緩和し、銀行が子会社としてM&A仲介会社を持つことも認めていく流れだと理解できます。
背景には事業承継問題がある
この話の背景には、やはり事業承継の問題があります。
特に「地銀子会社」という言葉がタイトルになっていることからもわかるように、地域の金融機関が、地元で後継者不足によって廃業や倒産に至ってしまう会社を何とか防ごうとしている、そうした政策的なメッセージも含まれているのだと思います。
もちろん、これまでもすでに地域金融機関はさまざまな形でM&A支援に取り組んでいます。大手と組んで進めているケースもあります。
そのうえで、今後はより積極的に、自ら仲介会社を作って対応していく方向性が出てきた、という理解です。
原則としては、こうした流れ自体は良いことだと思います。
ただ、その一方で、私なりに見たときにいくつか懸念点もあります。以下では、その点を順に説明します。

■:地銀子会社の
M&A仲介解禁で
考えたい懸念点

銀行は事業承継問題を
見つけやすい立場にある
銀行は、事業承継の問題を抱えている会社をかなり把握しやすい立場にあります。
家族構成もある程度見えますし、後継者がいないこと、社長の年齢、会社の実情なども把握していることが多いです。
さらに、借入がある会社であれば、会計数字はほぼ全部開示されています。随時状況も追っています。
つまり、銀行は会社の経営状態や承継課題を非常に見つけやすい。これは、銀行にとって大きなアドバンテージです。
ただ、このアドバンテージがそのまま売り手オーナーにとってメリットになるかというと、そこは慎重に見なければいけません。

懸念点①
買い手探しが銀行
ネットワーク内に
偏る可能性

本来は幅広く最も有利な相手を探すべき
たとえば、ある銀行の取引先に事業承継で困っている会社があったとします。
そのときに、銀行が「では私どもが後継者を探しましょう」と動くこと自体は自然です。
問題は、その探し方です。
おそらく多くの場合、自分たちの取引先の中から探そうとするでしょう。もちろん、その中に承継先としてふさわしい相手がいれば、それはよいことです。
いなかったとしても、できるだけそのネットワーク内で完結させようとする可能性があります。
本来であれば、売り手の立場に立って、中に売るか、外に売るかをフラットに考え、全国レベルで買い手を探す仕組みを広げることが理想です。 ところが、構造的にはそうなりにくい。
やはり自分たちの左手と右手で完結させたい、という発想になりやすいからです。
ネットワーク内だけでは最適な
相手が見つからないこともある
銀行に頼めば、その銀行系列のデータベースや取引先から買い手候補は見つかるでしょう。
しかし、銀行と取引のない会社や、まったく別のネットワークにいる有力な買い手は見つかりにくくなる懸念があります。
ここが大きな問題です。
M&Aでは、とにかく幅広く買い手を探し、その中で一番有利な相手を見つけることが重要です。
それができるかどうかは、構造的に見て難しいかもしれません。
少し乱暴な言い方をすれば、自分のネットワーク内で完結させようとすること自体が明らかなデメリットになり得ます。
売り手にとって本当に最適な相手が外にいるのに、その相手にたどり着けない可能性があるからです。

懸念点②
売り手より買い手に有利に働く可能性

売り手が困っている場面では力関係が偏りやすい
これは一般論ですが、売り手に後継者がいない場合、売り手は困っていることが多いです。
そのような状況で買い手を見つけるとなると、どうしても買い手側が強くなりやすい面があります。
M&A仲介の世界ではよくあることですが、買い手のほうが規模が大きく、ストロングバイヤーになりやすいため、条件交渉でも買い手有利になりやすいのです。
そのときに、銀行に頼んだ結果として、買い手に有利に働いてしまわないか。
売り手の目線だけに立って支援できるのか。ここは気になるところです。
地域内で収めたい発想が
選択肢を狭めることもある
中小企業では資金調達面でも不利になりやすい
もし銀行が自分たちのネットワークの中で買い手を探し、その範囲で話をまとめようとすれば、出てくる候補も限られます。
そうなると、売り手の選択肢は狭くなり、結果として条件面でも不利になる可能性があります。
さらに、会社を売却すると、その会社はもう銀行にとって従来どおりの取引先ではなくなる可能性があります。
たとえば、遠方の会社や東京のファンドに売れば、地元の銀行の取引先から外れることもあります。
一方で、地域の中で売却が完結すれば、銀行にとっては自分たちの取引基盤が減りにくく、むしろ新たな取引が広がる可能性もあります。
つまり、地域金融機関としては、できるだけ地域内に収めたいというインセンティブが働きやすいわけです。
この構造がある以上、売り手にとって本当にベストな相手を探すことと、銀行側の事情がきれいに一致するとは限りません。

■:ネットワークを持つM&A会社は一長一短
ネットワークがあるからこそ、それに頼ってしまう
私は、ネットワークを持っている仲介会社には一長一短があると思っています。
ネットワークがあること自体は強みですが、あるがゆえにそこに頼ってしまうのです。
私が提唱している「会社売却2.0」の考え方は、とにかく買い手は全部探すというものです。
ありとあらゆる仲介会社を経由してでも探し、その中でベストな相手を選ぶ。これが理想だと考えています。
地域内完結が合理的な案件もある
ただし、すべての案件で全国展開が正しいとも限りません。
比較的規模の小さい会社では、地域の中で完結することに合理性があるケースもあります。
たとえば、地方で飲食店を何店舗か展開している会社があったとして、その会社を全国規模の大手が買うことにそこまで合理性がない場合もあります。
そういうときは、隣町の会社や近隣エリアの事業者、あるいは地元で関連事業をやっている会社が買って、一緒に面倒を見るほうが自然なこともあります。 このようなケースでは、地域ネットワークの中でのM&Aがうまく機能する可能性があります。
私は、こういう場合に限っては、仲介モデルのメリットが出やすいと思っています。
全国に売れる会社なら全国で探したほうが有利
一方で、全国ベースで売れるような規模感のある会社や、事業として広く評価される会社であれば、地域内だけで探すのではなく、全国で探したほうがより有利な条件を見つけやすいと思います。
ですから、案件によって向き不向きがあります。
地方銀行の子会社によるM&A仲介が役立つ場面もあるでしょうが、すべての会社にとって最適とは限らない、ということです。

■:本来は全国に買い手を求める形が望ましい

できれば、地方銀行も仲介という形だけではなく、売り手については全国に買い手を求め、その中にたまたま自社の融資先やエリア内のネットワークも含まれている、という形にできればより成功しやすいと思います。
なぜ売りにくいのか(具体例)
ただ、それを本当にやろうとすると、銀行にとっては地域外に会社が売れてしまい、自分たちの将来の取引先が減る可能性も出てきます。
そう考えると、理屈では望ましくても、実務上は割り切りにくいのだと思います。

懸念点③
銀行に売却相談を
しづらい会社も多い

銀行に会社を売りたいと言うことへの心理的な抵抗
なぜ売れにくいのか
もう1つ大きな問題は、そもそも金融機関に相談するかどうかです。
私が会社を売る立場だったとして、銀行に「会社を売りたいんです」と言うか。
これは、なかなか悩ましい問題です。
たとえば、借入はあるけれど現金が5億円あるような会社であれば、比較的堂々と相談できるかもしれません。
しかし、ある程度銀行に依存して資金を借りている会社の場合、自分がM&Aを考えていることを銀行担当者がどう受け止めるかは気になるところです。
「良かったですね。ご決断されたんですね」と前向きに受け止めてくれる担当者もいるかもしれません。
一方で、「この社長、大丈夫かな」と思われるかもしれない。そういう不安は現実にあると思います。
銀行に先に言わないほうが
よいケースもある
そのため、現時点でも銀行に相談する人はいますが、相談しない人もたくさんいます。
私自身も、会社の状態が非常に良ければ銀行に堂々と言いますが、少し引け目がある状態なら、やはり言いづらいです。
その場合は、まず別のところで話を進めて、買い手候補を連れてきて、その方が借入を返済するなり整理するなりしてくれるのであれば、そのほうがスムーズという考え方もあります。
仮に後になって銀行から「なぜ先に言ってくれなかったのですか」と言われたとしても、迷惑をかけずにきちんと整理していくのであれば、それでよいという考え方もあるでしょう。
私自身、M&Aアドバイザーとして相談を受けたときに、「銀行にどう言えばいいですか」と聞かれることがありますが、私は、あえて最初から言う必要はないのではないかと考えています。
基本合意や譲渡契約の整理が進み、融資の承継や返済の話が具体化する段階で説明すれば足りることも多いからです。 少なくとも、買い手を探しているプロセスの段階で銀行に言うことが、売り手にとって明確なプラスになるケースは、あまり多くないように思います。

■:M&A業界全体としては知見が広がる面もある
プレイヤーが増えること自体は
前向きに見ている
もっとも、この流れを全面的に否定しているわけではありません。
金融機関には強いネットワークがありますし、会社のこともよく理解しています。そういう意味では、買い手を見つける力や案件を把握する力は十分にあるでしょう。
最近は、M&Aに関する講座や資格制度のような動きも出てきています。
業界としてライセンス制度を設けようという流れもあり、私自身も、これかなと思う講座を先行して受けてみています。経験があるので、内容自体はそこまで難しくはないのですが、試験も受ける予定です。
そうした講座には、地銀の方々もかなり多く受けに来ていました。
そういう意味でいうと、M&A全体の知識が広まり、銀行も含めてさまざまなプレイヤーが経験を積み、若い人たちも10年単位で育っていけば、日本のM&Aは確実によくなっていくと思います。
ただし仲介モデルには
利益相反の問題が残る
ただ、これは私の持論ですが、やはり仲介モデルが最適解とは思っていません。
利益相反の問題が根本的に解決されていないからです。
今後は、アドバイザー型の支援の比率がもっと上がっていくべきではないか。
私はそう思いながら、このニュースを見ていました。
つまり、この施策は、国として事業承継の問題がかなり切迫している中で、新しい打ち手を1つ追加したのだ、という見方をしています。

■:売り手オーナーに
とって
メリットがあるのか
選択肢が1つ増えるという意味ではメリット
売り手オーナーにとってメリットがあるかと言えば、選択肢が増えるという意味ではメリットがあります。
新たな相談先が1つ増えるわけですから、その点は前向きに捉えてよいと思います。
ただし、先ほど申し上げたように、自分の取引銀行に対して「会社を売りたい」と言うかどうかという問題はあります。
また、銀行側には自分たちのネットワーク内で完結させようとする動きが出やすいので、その点は注意が必要です。
小規模案件なら地域ネットワークが機能することもある
比較的小さな規模の会社であれば、地銀のネットワークの中でエリア内完結できることが、むしろよい結果につながることもあります。
その場合には、十分に意味のある選択肢になるでしょう。
ある程度の規模がある会社は全国で探すべき
一方で、もう少し上のレベルの会社であれば、全国レベルで買い手を探したほうが、より良い条件で売れる可能性が高いです。
ですから、地銀だけで進める必要はなく、もっと良い条件の相手を幅広く求めるべきだと私は考えています。
仲介で頼むと、実際に買い手を探す主体はその会社になります。
つまり、探し方自体が限定されやすいのです。
それに対して、売り手専門の立場で任せるのであれば、いろいろな会社に対して「こういう案件があるのですが、紹介してくれませんか」と幅広く声をかけていくことができます。
銀行も、自分のネットワーク内で会社を紹介し、その会社が買収して大きくなればよいわけですから、1つの買い手候補群として活用する形なら十分あり得ます。
結局のところ、今回の解禁は、選択肢が1つ増えたという以上でも以下でもない、というのが私の見方です。
■:まとめ
地銀子会社のM&A仲介解禁は、事業承継に悩む企業にとって新たな選択肢が1つ増えたという点で、前向きに見てよい動きです。
地域金融機関が持つネットワークや企業理解が、一定の場面では役立つ可能性もあります。
ただし、売り手オーナーの立場で見ると、買い手探しが銀行のネットワーク内に偏りやすいこと、買い手有利になりやすいこと、そもそも銀行に売却相談をしづらいケースがあることなど、注意しておきたい点もあります。
そのため、今回の動きを「これが最善の方法」と考えるのではなく、会社の規模や状況に応じて使い分けるべき選択肢の1つとして捉えることが大切です。
特に、より良い条件での会社売却を目指すのであれば、地域内だけに限定せず、幅広く買い手を探す視点が欠かせません。
「自社の場合は銀行に相談すべきか」「地銀ネットワークで進めるべきか、それとも全国で買い手を探すべきか」
このあたりは、会社ごとに判断が分かれるポイントです。
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