株式会社社長の専門学校
『会社売却2.0/
М&Aセルサイドアドバイザー協会』
代表 田中英司(たなかえいじ)
- M&Aのプロアドバイザーかつ現役経営者。
- ゼロから創業した会社を上場させ、買手・売手の両方を社長として経験。
- 上場企業を引き継いだ後、複数社の会社を経営。
- M&Aアドバイザーとしても、年商数千万~数十億のM&Aを成功に導く。
●「仲介会社が確認している契約書だから、大丈夫だろう」「あとは判子を押すだけだと言われている」。
会社売却の最終段階で、そう考えている方には、ぜひ一度立ち止まっていただきたいと思います。
株式譲渡契約書には、譲渡価格だけでなく、売却後にどのような責任を負うのかも書かれています。内容を十分に理解せずに契約すると、会社を手放した後まで、想定していなかった負担が残るかもしれません。
会社売却2.0では、私とM&Aに詳しい売主側の弁護士が一緒に契約書を確認し、これまでの交渉経緯を踏まえて修正を求めます。契約書を少し見ただけで「これなら問題ありません」と判断できるものではないからです。今回は、株式譲渡契約書ができるまでの過程と、売手として確認したい点をお伝えします。
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売手が損をしない
確認と交渉の
ポイント
●株式譲渡契約書は、誰が作るのでしょうか
仲介会社が作る場合と、買手側が作る場合があります
株式譲渡契約書は、SPAと呼ばれることもあります。株式の売買条件や当事者の義務などを定める、会社売却の重要な契約書です。
誰が最初の案を作るかは、案件によって違います。売主・買主ともにM&Aの経験が少ない場合などには、仲介会社が用意した案をもとに話を進めることがあります。
一方、私が関わる一定規模以上の案件では、買手側の弁護士が最初の案を作ることがほとんどです。買手はデューデリジェンスで対象会社を調べているため、その結果を契約内容に反映させるという流れです。
同じ株式譲渡契約書でも、条文の並び方や書き方は違います。よく使われるひな形があるからといって、どの契約書も同じ内容だと考えないでください。
買手の弁護士は、買手の利益を守る立場です
買手側に優秀な弁護士がついていると聞くと、安心できるように感じるかもしれません。ただ、その弁護士は、買手の利益を守るために仕事をしています。
そのため、最初の契約書案は、買手が負うリスクを抑え、売主に広い責任を求める内容になることがあります。売主から見れば厳しい条件でも、買手の弁護士としては自分の役割を果たしているのです。
私は、この状態を感覚的に「買手側に9割寄っている」と説明することがあります。もちろん、契約書の有利・不利を数字で正確に測れるわけではありません。最初の案を、そのまま双方に公平な条件だと思ってはいけないという意味です。
会社売却2.0では、その案を売主の立場から読み直します。すでに話し合った条件と違うところはないか、責任の範囲が広すぎないか、説明が曖昧なところはないかを確認していきます。
契約書は、やり取りを重ねて合意できる内容にします
最初の案を受け取ったら、私がこれまでの交渉経緯や合意事項を踏まえて確認し、専門の弁護士にも共有します。そのうえで、売主側の弁護士と情報を共有し、修正すべき条項を整理します。
例えば、
「ここは、この理由で合意した」「この点は、まだ決まっていない」と伝えることで、弁護士も具体的な修正案を作成しやすくなります。
その後、売主側の修正案を買手側へ返し、再び返ってきた内容を確認します。私の実務では、3〜5回ほどやり取りを重ねることもあります。複雑な案件では、さらに時間がかかる場合もあります。
特に重要なのが、売主が責任を負う範囲や金額の上限、責任を負う期間などの条件です。
数字を変えればよいという単純な話ではなく、何の責任なのか、どのような事情があるのかと合わせて考えます。
売主の希望を100%通すことはできません。相手にも譲れない事情があり、双方が合意しなければ取引は成立しないからです。しかし、最初の契約書案をそのまま受け入れるのと、十分に内容を確認し、交渉したうえで合意するのとでは、大きな違いがあります。
会社売却では、譲渡価格だけでなく、売却後に売主が負う責任も重要です。だからこそ、株式譲渡契約書は、売主側の立場から十分に確認し、必要な交渉を行うことが大切です。

●なぜ、売主側の
弁護士が必要なのでしょうか
「仲介会社の弁護士が見た」と「売主のために交渉した」は違います
買手には弁護士がついているのに、売主にはついていない。そのまま契約が進んでいく状況を、私は心配しています。
仲介会社に弁護士がいて、その会社の立場で確認していたとしても、それが売主の代理人として条件を交渉することと同じとは限りません。
誰の依頼を受け、どの立場で確認しているかを確かめる必要があります。
「弁護士がチェック済みです」という説明を聞いたときは、その一言だけで安心しないでください。自分が負うリスクを、自分の立場から検討してもらえているかが大切です。
会社売却2.0では、売主側の弁護士とともに契約を確認します。買手側が自分たちの利益を守るのであれば、売主側にもそのための体制が必要だと考えています。
契約書の修正を求めることは、けんかをすることではありません
契約書に多くの修正を求めると、「買手との関係が悪くなるのではないか」「契約がまとまらなくなるのではないか」と心配する売主もいるでしょう。
しかし、契約書の修正を求めることは、買手と対立することではありません。
例えば、次のような点について、双方の考えを確認しながら協議します。
- 「この条件は受け入れられます」
- 「この内容は、これまでの合意と異なります」
- 「この範囲まで責任を負うことはできません」
このように、受け入れられる条件と修正が必要な条件を整理し、双方が納得できる内容に調整していくのが契約交渉です。
買手側が作成した契約書案に対して、売主側から修正案を提示することは、M&Aでは通常のやり取りです。
会社売却2.0でも、買手との良好な関係を維持しながら、できる限り円滑に契約を進めることを大切にしています。
しかし、早く契約を成立させることだけが目的ではありません。
売主が契約内容を十分に理解し、売却後のリスクも納得したうえで契約を締結することが重要です。
会社売却は、売主にとって人生の大きな決断です。だからこそ、契約書の内容を十分に確認し、必要な交渉を行うことが欠かせません。


●売却後の
買い戻し条項には、
どのようなリスクが
ありますか
クロージング前と後では、会社を支配する人が変わります
クロージングとは、株式譲渡契約に基づいて代金の決済や株式の移転などを実行することです。実行後は株主が変わり、会社の支配権も買手側に移ります。
ここで注意したいのが、クロージング前に契約を解除することと、売却後に会社を買い戻すことは、まったく異なるという点です。
買手が会社を経営した期間に、どのような判断や取引をしているか、元のオーナーには分からないことがあります。その状態で「元に戻してください」と言われても、売却時と同じ会社が戻ってくるとは限りません。
私が買い戻し条項を慎重に見るのは、このためです。会社を戻すなら、その時点の状態や責任関係まで、改めて確かめなければならなくなります。
未達の条件を理由に、売却後まで白紙に戻せる内容になっていませんか
株式譲渡契約を締結してからクロージングまでに、取引先の承諾を得るなど、一定の条件を満たす必要がある案件もあります。例えば、重要な取引先から会社売却について承諾を得ることなどです。こうした条件を、クロージングの前提条件といいます。
状況によっては、一部が未達のままでも、双方が合意してクロージングを進めることがあります。その際に、「残った条件を一定期間内に満たせなければ、契約を白紙にする」といった条項が入っていれば、注意が必要です。
決済も株式の移転も終わった後に白紙に戻すとなれば、売主が会社を買い戻すような負担につながりかねません。何が起きると、誰がどこまでの義務を負うのか、具体的に確認する必要があります。
会社売却2.0では、こうした条項を見つけた場合、売主にそのまま受け入れていただくことはしません。なぜ必要なのか、どのようなリスクがあるのかを、弁護士と一緒に検討します。
買い戻しと補償は、分けて考える必要がある
クロージング後に未達の条件が残っていた場合、売主が何の責任も負わなくてよいということではありません。
大切なのは、問題が発生したときに、売主がどのような責任を、どこまで負うのかという点です。
私が交渉で重視するのは、売却後に問題が起きた場合、どのような損害があり、どこまで補償するのかを整理することです。会社全体を買い戻すことと、発生した損害について補償することは、同じではありません。
もちろん、買い戻しに関する条項が一律に無効だという話でもありません。実際の契約内容や事情によって扱いは変わります。だからこそ、「一般的な契約条件です」「よくある条項です」と説明されても、そのまま受け入れるべきではありません。
売却後にどのような責任が残るのか、その責任が過大になっていないかを、売主側の立場から十分に確認することが重要です。


●売主を守るために、どのような確認体制が必要ですか

売主・アドバイザー・専門弁護士の連携が重要
株式譲渡契約書を確認する際には、契約内容の法的なチェックだけでなく、これまでの交渉経緯や合意事項を正しく反映させることが重要です。
会社売却2.0では、売主・売手専任アドバイザー・M&Aに詳しい弁護士の三者が連携して、契約内容を確認します。
それぞれの役割は、次のとおりです。
- 売手専任アドバイザー(会社売却2.0)
これまでの交渉経緯や合意事項を把握し、契約書に正しく反映されているかを確認します。 - M&Aに詳しい弁護士
契約条項の法的な意味やリスクを確認し、売主に不利な条件があれば修正案を検討します。 - 売主(オーナー)
契約内容や売却後に負う責任について説明を受け、十分に理解したうえで最終的な判断を行います。
実際の契約交渉では、まず私と弁護士が内容を確認し、修正が必要な点を整理します。そのうえで売主に説明し、意向を確認しながら買手側との交渉を進めます。
売主は、専門用語を全部知っていなければならないわけではありません。分からない点について説明を受け、「自分は何を約束し、何を負担するのか」を理解していただくことが必要です。
そのためには、単に弁護士が契約書をチェックするだけでは十分とはいえません。
交渉の経緯を把握しているアドバイザーと、法律の専門家である弁護士が情報を共有し、売主の利益を守るために連携する体制が重要です。

●契約書が届いてから、初めて弁護士を探すと難しい面
もあります
最後の段階で突然契約書だけを見せられても、弁護士には、それまで何を話し合ったのか分かりません。M&Aに詳しい弁護士でも、経緯を知らなければ、どこまで譲れるか、どこを守るべきかの判断に必要な情報が不足します。
会社売却2.0では、契約書の条文だけでなく、それまでの交渉内容や合意事項も踏まえて、弁護士とともに確認します。売主が別途弁護士に依頼する場合も、関連資料や合意の経緯を共有できるようにしておくことが大切です。
また、私自身も「この契約書を少し見て、大丈夫か教えてください」と依頼されることがあります。
しかし、契約書だけを短時間で確認して、簡単に「問題ありません」と答えることはできません。継続して支援している案件でも、弁護士と協議して確認しているからです。
大切なのは、契約書の確認を誰に頼むかだけでなく、どの情報を渡し、どう相談するかまで整えることで、契約内容を検討しやすくなります。

まとめ
※株式譲渡契約書は
売主の立場から
確認・交渉することが重要
株式譲渡契約書は、売却価格が合っているかだけを見て押印できるものではありません。誰が作った案なのか、売主の立場で確認する人がいるか、売却後にどのような責任が残るかを確かめる必要があります。
会社売却2.0では、売主側の専門弁護士と交渉経緯を共有し、修正のやり取りを重ねて、合意できる条件を探します。特に買い戻しなど、売却後の負担に大きく関わる条項は、意味を曖昧にしたまま進めないでください。

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個別の契約書の法的な判断については、取引の経緯を踏まえ、専門の弁護士と確認する必要があります。
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会社売却2.0


