M&Aの株式譲渡契約書は誰が作る?注意点や不利にならないためのポイント

株式会社社長の専門学校
『会社売却2.0/
М&Aセルサイドアドバイザー協会』
代表 田中英司(たなかえいじ)

  • M&Aのプロアドバイザーかつ現役経営者。
  • ゼロから創業した会社を上場させ、買手・売手の両方を社長として経験。
  • 上場企業を引き継いだ後、複数社の会社を経営。
  • M&Aアドバイザーとしても、年商数千万~数十億のM&Aを成功に導く。

会社売却を進めるうえで、最終局面に近づくと必ず重要になるのが、株式譲渡契約書です。株式譲渡契約書は、英語ではSPAと呼ばれることもあります。

この契約書は、単に「株を売ります」「代金を支払います」という書類ではありません。買手がデューデリジェンスで確認した内容、確認しきれなかった内容、売手が保証する内容、クロージングまでに双方が守るべき約束、損害が発生した場合の責任範囲など、会社売却後のリスクを左右する非常に重要な書類です。

特に注意すべきなのは、株式譲渡契約書の内容が、構造的に買手有利になりやすいという点です。一定以上の規模のM&Aでは、契約書の起案は買手側の弁護士が行うことが一般的です。そのため、売手側に本当に売手の立場で確認する弁護士がいなければ、売手にとって不利な内容がそのまま契約書に残ってしまう可能性があります。

今回は、M&A仲介と会社売却2.0で、株式譲渡契約書に対する対応がどのように違うのかを解説します。

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M&Aの[株式譲渡契約書]は誰が作る?

注意点や不利にならないためのポイント

株式譲渡契約書は、会社売却の最終段階で作成される重要な契約書です。株式譲渡の場合は「株式譲渡契約書」、事業譲渡の場合は「事業譲渡契約書」を作成します。

株式譲渡契約書は、M&Aの実務では「SPA(Stock Purchase Agreement)」と呼ばれることもあります。

一般的に、株式譲渡契約書の作成は、買手によるデューデリジェンス(買収監査)が始まった後に進められます。

デューデリジェンスでは、買手が売手企業の財務・法務・税務・労務・事業などを詳しく調査します。

主な目的は、次のような点を確認することです。

  • 会社概要書に記載された内容と実態に違いがないか
  • 会社概要書に記載されていない問題やリスクがないか
  • 買収後に大きな負担となる可能性がないか

ただし、限られた時間のなかで、会社のすべてを完璧に調査することは現実的ではありません。あらゆる項目を細かく調べようとすれば、膨大な時間と費用がかかるためです。

そのため、実務では、買手が重要と考える項目を重点的に調査し、その他の項目は簡易的な確認にとどめます。そして、調査だけでは確認しきれない部分については、売手が「開示した内容に誤りがないこと」や「一定の問題が存在しないこと」を契約書上で保証します。

つまり、株式譲渡契約書は、デューデリジェンスで判明した問題への対応や、調査だけでは確認できなかった部分のリスク分担を、最終的に契約条件として明文化するものです。

株式譲渡契約書の内容について売手と買手が合意し、契約を締結した後、一定の準備期間を経て、会社売却の最終手続きが行われます。この最終手続きを、M&Aでは「クロージング」といいます。

クロージングでは、主に次の手続きが同時に行われます。

  • 買手から売手へ譲渡代金を支払う
  • 売手から買手へ株式を移転する
  • 必要に応じて役員が退任する
  • 買手による新しい経営体制へ切り替える

つまり、株式譲渡契約書にサインしただけでは、会社売却は完了しません。

契約書で定めた売手と買手それぞれの約束や条件を満たし、譲渡代金の決済と株式の移転が完了して、はじめて会社売却が正式に実行されたことになります。

その意味で、株式譲渡契約書は、クロージングまでの道筋と、さらにクロージング後に売手と買手がどのような責任を負うのかを定める、極めて重要な書類です。の責任関係を定める極めて重要な書類です。

一定規模以上のM&Aでは、
買手側が作成することが多い

一定規模以上のM&Aでは、株式譲渡契約書の最初の案を買手側が作成するのが一般的です。

その理由は、売手企業のデューデリジェンスを行っているのが買手だからです。

買手は調査を通じて、次のような内容を把握しています。

  • 重点的に確認した項目
  • 調査によって判明した問題
  • 買収後のリスクとして懸念している点
  • 契約書に盛り込みたい条件

このような調査結果や懸念点を契約書へ反映するため、買手側が最初の案を作ることには、実務上の合理性があります。

一方で、一般的に契約書は、最初に作成した側に有利な内容になりやすいという点に注意が必要です。

売手が希望すれば、売手側で契約書を起案できる可能性もあります。しかし、買手がどのリスクを重視し、どのような条件を求めるかは、買手側の判断です。

売手側が先に契約書を作ると、買手が重視していない事項まで広く盛り込み、かえって交渉する項目を増やしてしまう可能性もあります。

そのため、買手側に契約書を起案してもらうこと自体は、実務上、特に問題ありません。ただし、その案をそのまま受け入れるのではなく、売手側の立場から内容を十分に確認し、必要な修正を求めることが重要です。

実際に作成するのは、M&A仲介会社ではなく買手側の弁護士

会社売却2.0

「買手側が契約書を作る」といっても、実際に起案するのは、通常、買手企業が依頼した弁護士です。

原則として、M&A仲介会社が作るわけではありません。

「買手側が契約書を作る」といっても、実際に起案するのは、通常、買手企業が依頼した弁護士です。

原則として、M&A仲介会社が作るわけではありません。

ただし、次のような場合には、仲介会社が契約書の案を用意することもあります。

  • 比較的小規模なM&A
  • 買手がM&Aに慣れていない
  • 買手が契約内容を仲介会社に任せている
  • 買手が契約条件にそれほどこだわっていない

しかし、これらは一般的なケースとはいえません。

一定規模以上のM&Aでは、売手がM&A仲介会社に依頼している場合でも、株式譲渡契約書を起案するのは買手側の弁護士であることが一般的です。

売手としては、「誰が契約書を作ったのか」を確認したうえで、買手側の立場で作られた案であることを理解し、売手側に不利な内容がないかを慎重に確認する必要があります。

本来は売手側の弁護士が確認すべき

買手側の弁護士が作成した株式譲渡契約書は、本来、売手側の弁護士が確認すべきです。

買手側の弁護士は、買手の利益を守る立場で契約書を作成します。それに対して、売手側の弁護士は、売手の利益を守る立場から契約書を確認し、不利な条件や過度な責任が含まれていれば、必要な修正を求めます。

つまり、次のように、それぞれの弁護士が依頼者の利益を守るのが自然な形です。

  • 買手側の弁護士:買手の利益を守るために契約書を作成する
  • 売手側の弁護士:売手の利益を守るために内容を確認・修正する

ところが、M&A仲介の実務では、このような形にならないことがあります。

売手が弁護士をつけていない場合、買手側の弁護士が作成した契約書を、M&A仲介会社の弁護士が確認するケースがあるためです。

しかし、仲介会社の弁護士は、売手だけの利益を守る弁護士ではありません。仲介会社は売手と買手の間に入り、取引の成立を支援する立場だからです。

そのため、買手側の利益を守る弁護士が作成した契約書を、売手側の弁護士ではなく仲介会社の弁護士だけが確認する形では、売手の利益を守る体制として十分とはいえません。

大手のM&A仲介会社であれば、社内や提携先に経験豊富な弁護士がいることがあります。そのため、売手は「仲介会社に弁護士がいるなら、契約書の確認も任せられる」と考えるかもしれません。

しかし、仲介会社の弁護士と売手側の弁護士では、立場も役割も異なります。

仲介会社の弁護士が主に確認するのは、契約書に明らかな問題がないかという、コンプライアンス上のチェックです。

例えば、次のような点が確認されます。

  • 売却後も売主の個人保証が解除されないなど、重大な問題が生じないか
  • 法令やM&A仲介のルールに反する内容が含まれていないか
  • どちらか一方に著しく不利な契約になっていないか
  • 取引の進行を妨げるような重大な問題がないか

このような基本的な問題については、仲介会社の弁護士が確認してくれる可能性があります。

ただし、売手の利益を最大限守るために、細かな契約条件まで交渉してくれるわけではありません。

例えば、売手にとって重要な論点には、次のようなものがあります。

  • 表明保証の期間は長すぎないか
  • 損害が発生した場合の補償上限額は適切か
  • 売手が責任を負う範囲が広すぎないか
  • 買手に有利な表現になりすぎていないか
  • 売手として修正を求めるべき条項はどこか

こうした点を売手の立場から細かく確認し、買手側と交渉することは、仲介会社の弁護士の役割ではありません。

なぜなら、M&A仲介会社は売手だけの代理人ではなく、売手と買手の間に入って取引の成立を支援する立場だからです。

「仲介会社に弁護士がいるから安心」と考えるのではなく、仲介会社の弁護士と売手側の弁護士では、確認する目的と守る相手が異なることを理解しておく必要があります。

会社売却2.0の場合は、一般的なM&A仲介とは契約書を確認する体制が異なります。

会社売却2.0では、売手と買手の立場が分かれています。売手側には、売手側アドバイザーがつきます。そして、買手側の弁護士が作成した契約書を、売手側アドバイザーと、売手側にのみつく弁護士が確認します。

これは、本来あるべき普通の形です。

買手側の弁護士が作成した株式譲渡契約書を、売手側アドバイザーと売手側の弁護士が、売手の立場から確認します。

役割は、次のように明確です。

  • 買手側の弁護士:買手の利益を踏まえて契約書を作成する
  • 売手側アドバイザー:M&Aの条件や取引全体を売手の立場から確認する
  • 売手側の弁護士:契約上のリスクや責任範囲を売手の立場から確認する

これは特別な仕組みではなく、それぞれの立場に専門家がつく、本来あるべき自然な形です。

売手側に独立したアドバイザーと弁護士がいることで、売手に不利な条件や過度な責任が含まれていれば、契約書に修正を入れ、買手側へ変更を求めることができます。

このように、買手側が作成した契約書をそのまま受け入れるのではなく、売手の利益を守る立場から確認・交渉できることが、会社売却2.0の大きな特徴です。

株式譲渡契約書は、買手側から提示された内容について説明を受け、その場ですぐに押印するものではありません。

実務では、売手側と買手側が何度も修正案をやり取りしながら、最終的な内容を決めていきます。

買手側の弁護士は、買手の利益を守る立場で契約書を作成します。そのため、最初に提示される契約書は、買手に有利な内容になっていることが少なくありません。

これに対して、売手側も契約書を確認し、不利な条件や責任が重すぎる条項があれば、必要な修正を求めます。

もちろん、売手側の希望をすべて通せるわけではありません。買手にも、買収後のリスクを抑える必要があります。双方がそれぞれの立場を主張しながら、譲れるところは譲り、譲れないところは押し返して、折り合いをつけていきます。

例えば、次のような調整が考えられます。

  • 表明保証の期間を短くする代わりに、補償上限額は一定程度受け入れる
  • ある条項では買手側の主張を受け入れ、別の条項では売手側の希望を反映してもらう
  • 売手の責任範囲を限定する代わりに、特定のリスクについては個別に対応する

このように、複数の条件を調整しながら、双方が合意できる契約書へ仕上げていきます。

・契約書のやり取りは、
3~5回程度になることもある

株式譲渡契約書の交渉は、通常、1回のやり取りで終わるものではありません。

比較的シンプルな案件で、契約内容が厳しすぎず、争点も少ない場合は、2~3回程度のやり取りでまとまることがあります。修正する箇所が限られていれば、短期間で合意できるケースもあります。

一方、複雑な案件や検討すべき論点が多い案件では、5回程度、場合によってはそれ以上のやり取りが必要になることもあります。

契約書の交渉は、一般的に次のように進みます。

  1. 買手側の弁護士が契約書案を作成する
  2. 売手側の弁護士とアドバイザーが内容を確認し、修正案を返す
  3. 買手側が修正案を検討し、回答や再修正案を返す
  4. 売手側が再度検討し、必要に応じて修正を求める
  5. このやり取りを繰り返し、最終的な合意内容を決める

このような契約書の「キャッチボール」を重ねて、双方が納得できる内容に仕上げることが、本来のM&A実務です。

買手側から提示された契約書について、仲介会社から「だいたいこんなものです」と説明を受けただけで、そのまま押印するべきではありません。

※売手に不利な条件が含まれていないかを、売手側の弁護士やアドバイザーに確認してもらい、必要な修正を求めることが重要です。

会社売却2.0

ここまでの内容を整理すると、M&A仲介で株式譲渡契約書が売手に不利になりやすい原因は、買手側が契約書を作ること自体ではありません。重要なのは、その契約書を「誰が、どの立場で確認するのか」です。

買手はデューデリジェンスを通じて、売手企業の問題やリスクを調査しています。その結果を把握している買手側の弁護士が契約書を作ることは、実務上、自然な流れです。

問題は、その後の確認体制にあります。

M&A仲介では、売手側に弁護士がついていない場合、買手側の弁護士が作った契約書を、仲介会社の弁護士が確認する形になりがちです。

このとき売手は、「仲介会社の弁護士が確認しているから、自分の利益も守られている」と思ってしまうことがあります。しかし、仲介会社の弁護士は、売手だけのために契約書を確認しているわけではありません。

仲介会社は売手と買手の間に立ち、取引の成立を支援する立場です。そのため、仲介会社の弁護士も、売手だけの利益を守る代理人ではありません。

つまり、売手に不利になりやすい原因は、次のような構造にあります。

  • 買手側には、買手の利益を守る弁護士がいる
  • 売手側には、売手だけの利益を守る弁護士がいない
  • 仲介会社の弁護士を、売手側の弁護士だと誤解してしまう

売手が確認すべきなのは、「仲介会社に弁護士がいるか」ではなく、「自分だけの立場に立ち、自分の利益を守る弁護士がいるか」です。

株式譲渡契約書で不利な条件を負わないためにも、誰が契約書を確認しているのか、その立場まで確認することが非常に重要です。

会社売却2.0が実際に支援した案件のなかにも、株式譲渡契約書の交渉が非常に重要になった事例があります。

この案件は5月1日にクロージングを迎えました。買手はファンドで、買手側には著名な大手法律事務所がついていました。

さらに、一般的な株式譲渡ではなく、一定の条件を満たした場合に株式を買い戻す「買戻し条件」が含まれていました。買戻し条件に加えて種類株式の設計も必要となる、非常に複雑な案件でした。

契約書には専門的で理解しにくい内容が多く含まれていたため、会社売却2.0では、それぞれの条項が何を意味し、売手にどのような影響を及ぼすのかを、最後まで丁寧に説明しながら進めました。

買手側と売手側の弁護士が
約1か月半にわたり交渉

この案件では、買手側の弁護士と売手側の弁護士が、約1か月半にわたって契約書の交渉を行い、売手として受け入れるべき条件は受け入れる一方、過度な保証や不要な責任については修正や削除を求め、売手の負担をできる限り減らしていきました。

株式譲渡契約書の交渉とは、本来、このように進めるものです。

買手側から提示された契約書を、そのまま受け入れて終わるものではありません。一つひとつの条項を読み込み、売手に不利な内容がないかを確認したうえで、法律上の問題は弁護士と検討しながら交渉する必要があります。

会社売却2.0は売手側アドバイザーとして、M&A実務の観点から意見を伝えながら交渉に加わりました。

当初の契約書には、
売手に過度な保証が含まれていた

買手側から最初に提示された契約書には、売手にとって過度な保証や責任が含まれていました。

契約当事者の関係が良好であれば、実際には問題にならない条項もあるかもしれません。しかし、「問題が起きる可能性が低い」という理由だけで、売手に不利な条項を残してよいわけではありません。

特にこの案件では買戻し条件があったため、株式を一度売却するオーナーだけでなく、将来、株式を買い戻す可能性のあるオーナーにも、過度な保証や責任が及ぶ内容になっていました。

さらに、買戻し条件に関連して種類株式の設定も必要でしたが、一部の条項には、当初合意していた条件とは異なる内容で株式が買い取られるようにも読める表現がありました。

買手側から「そのような意味ではありません」と説明されても、契約書の文面が別の意味にも読めるのであれば、そのままにしておくことはできません。

そこで、売手側から次のような点を一つずつ指摘しました。

  • この文章は、当初の合意とは異なる意味にも読めないか
  • この条項によって、売手の責任が想定以上に広がらないか
  • 将来の買戻しが、当初とは違う条件で行われる可能性はないか
  • 売手や将来の買戻し予定者に、過度な保証を求めていないか

こうしたやり取りを重ね、曖昧な表現を明確にするとともに、売手にとって過度な条件をできる限り外していきました。

当初の契約書には、売手側の立場から見れば、そのまま受け入れることが難しい条項も少なくありませんでした。だからこそ、売手側の弁護士と売手側アドバイザーが、それぞれの専門性を生かして契約書を確認し、交渉に関わることが重要なのです。

株式譲渡契約書の確認や交渉に、売手側の弁護士が関与していないM&Aは、売手にとって非常に危険です。

買手側には、買手の利益を守る弁護士がついています。それに対して、売手側に売手の利益を守る弁護士がいなければ、契約交渉の体制そのものが、売手にとって不利になります。

これは、M&A仲介会社が良いか悪いかという問題ではありません。仲介会社は売手と買手の間に立つため、構造上、売手だけの利益を守ることができないのです。

仲介会社の弁護士は、法令やルールに反する内容がないかといった、コンプライアンス上の確認はできるかもしれません。しかし、次のような条件を売手の立場から細かく確認し、買手側と交渉する役割ではありません。

  • 表明保証の内容や範囲
  • 補償責任の範囲
  • 売手が責任を負う期間
  • 補償の上限金額
  • クロージングの前提条件
  • 株式の買戻し条件
  • 売手に不利な条項や曖昧な表現

売手が確認すべきなのは、「仲介会社に弁護士がいるか」ではありません。

※本当に重要なのは、「売手だけの立場に立ち、売手の利益を守ってくれる弁護士がいるか」です。

この違いを正しく理解することが、株式譲渡契約書で不利な条件を負わないための重要なポイントです。

会社売却2.0では、買手探しや譲渡条件の交渉だけでなく、株式譲渡契約書の確認・交渉まで、売手の立場に立って支援します。

契約書の交渉で大切なのは、それまでの交渉経緯を理解したうえで、一つひとつの条項を確認することです。

会社売却2.0は売手側アドバイザーとして、次のような内容を把握しています。

  • 買手とのこれまでのやり取り
  • 譲渡条件が決まるまでの交渉経緯
  • 売手が特に重視していること
  • 売手が譲れる条件と譲れない条件
  • 買手側と合意した内容

こうした経緯を踏まえ、売手側の弁護士と協議しながら、契約書の法的な問題や売手のリスクを確認します。売手に不利な条項や、これまでの合意と異なる内容があれば、買手側に修正を求めます。

もちろん、買手側の弁護士も買手の立場から回答し、修正案を返してきます。それを売手側で再度検討し、必要であれば、さらに修正を求めます。

このような契約書のキャッチボールを繰り返し、売手と買手の双方が納得できる内容に仕上げていきます。

※契約書を買手側の案のまま受け入れるのではなく、売手側のアドバイザーと弁護士が連携して交渉する。

これが、契約書の締結まで売手の利益を守る、会社売却2.0の進め方です。

●株式譲渡契約書で
売手が確認すべきこと!

株式譲渡契約書では、売手に不利な条件や、必要以上に重い責任が含まれていないかを確認する必要があります。

特に重要なのは、次の項目です。

■表明保証の範囲

表明保証とは、会社の財務、税務、法務、労務などについて、一定の事実が正しいことを売手が保証するものです。

買手は、デューデリジェンスだけでは確認しきれなかった事項について、売手に保証を求めます。しかし、保証の対象が広すぎると、売却後に問題が発生した際、売手が想定以上の責任を負う可能性があります。

売手が何を、どこまで保証するのかを慎重に確認する必要があります。

■補償期間

売却後、いつまで売手が責任を負うのかも重要です。

補償期間が長すぎると、売手は会社を手放した後も、長期間にわたってリスクを抱えることになります。責任の内容に応じて、妥当な期間が設定されているかを確認します。

■補償上限額

売却後に問題が発生した場合、売手が負担する補償額の上限も確認が必要です。

譲渡代金に対して過大な金額が設定されていないか、売手として受け入れられる範囲かを慎重に検討します。また、上限額だけでなく、補償の対象や請求条件についても確認することが大切です。

■クロージング条件

契約締結からクロージングまでに、売手と買手がそれぞれ何を行うのかを定めた条件です。

売手に過度な義務が課されていないか、期限までに実行することが難しい条件が含まれていないかを確認します。売手だけでは実現できない事項が条件になっていないかにも注意が必要です。

■個人保証の解除

会社の借入金や取引契約について売主が個人保証をしている場合、会社売却後にその保証が残らないようにする必要があります。

クロージングまでに個人保証が解除されるのか、解除できない場合に買手がどのように対応するのかを、契約書で明確にしておくことが重要です。

■特殊条件や買戻し条件

株式の買戻し、種類株式、将来の再取得、条件付き譲渡など、特殊な仕組みが含まれる場合は、より慎重な確認が必要です。

契約書の表現によっては、当初合意していた内容とは異なる条件で買戻しなどが行われる可能性があります。

買戻しの条件、価格、期限、手続き、対象となる株式などを明確にし、想定していない責任や不利益が生じないかを専門家に確認してもらうことが大切です。

株式譲渡契約書は、条項の一つひとつが、売却後の売手の責任に直結します。内容を十分に理解しないまま押印せず、売手側の弁護士やアドバイザーと確認しながら、必要な修正を求めることが重要です。

株式譲渡契約書は、会社売却の最終段階で締結する、非常に重要な書類です。契約内容によって、売却後に売手が負う責任やリスクが決まります。

一定規模以上のM&Aでは、買手側の弁護士が契約書を作成するのが一般的です。買手がデューデリジェンスを行い、そこで把握した問題やリスクを契約書に反映するため、実務上は自然な流れといえます。

ただし、買手側の弁護士が作成する契約書は、買手の利益を守る立場で作られています。そのため、売手にとって不利な条件や、必要以上に重い責任が含まれている可能性があります。

だからこそ、売手側にも独立した弁護士が必要です。売手側の弁護士が契約書を確認し、不利な条項があれば修正を入れ、買手側に変更を求めることが、本来あるべき形です。

M&A仲介では、売手側に弁護士がつかず、買手側の弁護士が作成した契約書を、仲介会社の弁護士が確認することがあります。

しかし、仲介会社の弁護士は、売手だけの利益を守る立場ではありません。法令やルールに反する内容がないかといった基本的な確認はできても、売手の利益を守るために細かな条件まで交渉する役割ではないのです。

一方、会社売却2.0では、売手側アドバイザーと売手側の弁護士が連携して契約書を確認します。これまでの交渉経緯や売手の希望、譲れる条件と譲れない条件を踏まえ、不利な内容があれば買手側に修正を求めます。

株式譲渡契約書は、買手側から提示された内容に、そのまま押印するものではありません。

売手と買手が何度も修正案をやり取りし、譲るべきところは譲り、守るべきところは押し返しながら、最終的な合意に近づけていくものです。

※会社売却後に後悔しないためにも、「仲介会社に弁護士がいるか」ではなく、「売手だけの立場に立つ弁護士とアドバイザーがいるか」を確認することが重要です。

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