M&Aのトップ面談では何を話すべきか?会社売却2.0で交渉の質が変わる理由

株式会社社長の専門学校
『会社売却2.0/
М&Aセルサイドアドバイザー協会』
代表 田中英司(たなかえいじ)

  • M&Aのプロアドバイザーかつ現役経営者。
  • ゼロから創業した会社を上場させ、買手・売手の両方を社長として経験。
  • 上場企業を引き継いだ後、複数社の会社を経営。
  • M&Aアドバイザーとしても、年商数千万~数十億のM&Aを成功に導く。

M&Aにおけるトップ面談は、売手企業と買手候補が直接顔を合わせる重要な場面です。

一般的には「まずは顔合わせ」「お互いの人柄を知る場」と説明されることもありますが、会社売却2.0では少し考え方が異なります。

トップ面談は、単なる挨拶の場ではありません。買手候補がすでに一定の情報を確認し、譲渡条件も理解したうえで面談を希望している以上、売手にとっても買手にとっても、具体的な確認や交渉を進める重要なステージだと考えています。

この記事では、M&A仲介会社と会社売却2.0におけるトップ面談の違い、誰が主催するのか、何回行うべきなのか、そして本当に見るべきポイントについて解説します。

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M&Aのトップ面談では
何を話すべきか?

会社売却2.0で
交渉の質が変わる理由

会社売却2.0では、トップ面談を単なる挨拶や顔合わせの場とは考えていません。

もちろん、ビジネスの場として礼儀や誠意を持って対応することは大前提です。しかし、それだけで終わらせるのではなく、トップ面談の時点で何を議論し、何を確認すべきかを合理的に考えることが重要です。

「トップ面談では踏み込んだ質問をしてはいけない」「価格や条件の話は避けるべき」といった固定的なルールに縛られる必要はありません。会社売却2.0では、売手と買手が直接会える貴重な機会を、今後の交渉を前に進めるために最大限活用します。

一般的なM&A仲介では、トップ面談について「まずは顔合わせをする場」「お互いの人柄や会社を知る場」と説明されることがあります。また、踏み込んだ質問や価格・条件に関する話は控えるように言われるケースもあります。

しかし、会社売却2.0では、トップ面談を挨拶だけで終わらせることに疑問を感じています。せっかく売手と買手が直接会うのであれば、今後の判断に必要なことは、できる限りその場で話し合うべきです。

トップ面談に参加する買手候補は、対象会社について何も知らない状態ではありません。通常は概要書などの資料を確認し、社内で一定の検討を行ったうえで、対象会社に関心を持って面談を希望しています。

そのため、トップ面談は会社概要を一から説明するだけの場ではなく、資料だけでは分からない強みや課題、将来性などについて、より深く理解してもらう場と考えるべきです。

十分な検討もせず、単なる情報収集や様子見として参加されるだけでは、売手と買手の双方にとって有意義な時間にはなりません。

・聞きにくいことこそ、
面談で直接確認する

M&Aでは、メールや資料だけでは伝わりにくいことがあります。特に経営者同士であれば、聞きにくい質問ほど、直接会って話した方が相手の意図や考えを理解しやすくなります。

そのため、会社売却2.0では、買手候補に対して「あえて踏み込んで聞いてください」と伝えることがあります。同時に、売手側からも、譲渡後の経営方針や従業員の処遇、買収の目的、意思決定の体制など、確認すべきことは率直に質問します。

もちろん、相手を追及したり、場の雰囲気を悪くしたりすることが目的ではありません。礼儀と誠意を持ちながら、後の認識違いや条件交渉の行き違いを防ぐために、必要な確認を行うということです。

トップ面談の段階で懸念点を率直に話し合うことが、結果として売手と買手の信頼関係を築くことにつながります。

1時間で区切らず、
必要であれば2時間でも3時間でも話す

会社売却2.0

せっかく経営者同士が直接会える機会を設けたにもかかわらず、形式的に「1時間」と決めて終了する必要はありません。

確認すべきことが多ければ、2時間、3時間かけて話すこともあります。事業の将来性や譲渡後の方針、条件面の考え方、相性、懸念点など、双方が納得できるまで話し合うことが大切です。

もちろん、後日Zoomなどで追加のヒアリングを行う場合もあります。しかし、直接会って話せる時間があるのであれば、その機会を無理に短くする合理的な理由はありません。

会社売却2.0では、トップ面談の段階から細かな疑問や懸念点について可能な限り確認します。
単なる顔合わせではなく、売手と買手がお互いを見極め、今後の交渉の質を高めるための重要な場として活用しています。

ここからは、私自身の経験に基づく見解も含まれます。

M&A仲介会社では、トップ面談を「売手と買手が初めて顔を合わせ、お互いの人柄や考え方を知る場」と位置づけることがあります。

もちろん、すべての仲介会社が同じ方針とは限りません。しかし、M&Aに関する動画や解説では、「トップ面談ではあまり踏み込んだ話をせず、まずは良好な関係をつくることが大切」と説明されることがあります。

なぜ、このような考え方になりやすいのでしょうか。

仲介会社は、
売手と買手の間に立つ存在

M&A仲介会社は、売手と買手の双方と契約し、両者の間に立って取引成立を支援します。そのため、売手または買手のどちらか一方だけの立場に立って助言することが難しい場合があります。

たとえば、トップ面談で売手と買手が条件交渉を始めたとします。

売手から「この条件を受け入れるべきでしょうか」と聞かれたとしても、仲介会社が売手の利益だけを考えて助言することは簡単ではありません。反対に、買手から同じような相談を受けた場合も、買手側だけに有利な助言はできません。

明らかに不合理な条件や、一般的な取引慣行・モラルに反する内容であれば、仲介会社も指摘できるでしょう。しかし、売手と買手のどちらに有利かという交渉上の判断については、一方の立場に踏み込んだ助言をしにくいのです。

直接交渉が始まると、仲介会社による調整が難しくなることもある

会社売却2.0

仲介会社は通常、売手と買手の双方から意向を聞き、両者の間に入って条件を調整します。

しかし、トップ面談で売手と買手が直接、価格や条件について細かな交渉を始めると、仲介会社が両者の意見を整理し、取引をまとめることが難しくなる場合があります。

こうした背景から、従来のM&A仲介の現場では、トラブルや認識の食い違いを避けるために、「トップ面談では細かな条件交渉をしない」「まずは顔合わせにとどめる」という考え方が定着してきたのではないかと、私は考えています。

会社売却2.0は、
売手の立場から

必要なことを確認する

会社売却2.0では、売手の立場で買手候補と向き合うため、必要なことはしっかり確認します。

売手側として、相手の目を見て、丁寧に、誠意を持って話す。場合によっては少し厳しい話もする。

これが、M&A仲介会社と会社売却2.0におけるトップ面談の大きな違いだと考えています。

会社売却2.0では、トップ面談の主催者は、基本的に買手候補側だと考えています。

なぜなら、トップ面談は買手候補が対象会社の情報を確認し、「さらに詳しく話を聞きたい」と希望することで設定されるものだからです。

・買手候補は事前に情報を確認したうえで面談を希望する

面談までの流れをいいますと、会社売却2.0は、まずノンネームシートを、買手探索を行うM&A仲介会社などに提供します。ノンネームシートとは、会社名を伏せたまま、業種や地域、売上規模などの概要を伝える資料です。

その情報を見て興味を示した買手候補には、秘密保持契約(NDA)を締結したうえで、会社概要書などの詳しい資料を開示します。

買手候補はその概要書を確認し、必要に応じて追加の質問をします。売手側も、回答できる範囲でその質問に対応します。

そのうえで買手候補が、

  • この会社に興味がある
  • 希望する金額も検討できそうだ
  • 経営者に直接会って話を聞きたい

と判断し、トップ面談を希望します。

つまり、トップ面談は買手候補からの申し出によって設定されるものです。
そのため、会社売却2.0では、基本的に買手側が主催するのが自然だと考えています。

・面談場所は売手の近くで、買手側が手配する

トップ面談の日程は、売手経営者の都合を確認しながら調整します。面談場所については、売手側が出向きやすい場所に設定するのが基本です。

たとえば、売手企業の最寄り駅や、売手経営者が移動しやすい主要駅の近くにある会議室などを利用します。

会議室の予約は、買手側または買手側を支援する仲介会社が行い、その費用も買手側が負担するのが合理的です。

買手候補が面談を希望し、売手がその申し出を受けるという関係を考えれば、買手側が売手の負担を抑える形で準備するのが自然でしょう。

・トップ面談の進行順にも筋がある

トップ面談では、事前に進行表が用意されることもあります。そのなかには、「最初に売手が自己紹介をする」「続いて売手が会社概要を説明する」という順番になっているものがあります。

しかし、会社売却2.0では、この進め方に違和感があります。

売手はすでに会社概要書などを通じて、会社の情報を開示しています。買手候補も、その内容を確認したうえでトップ面談を希望しています。

それであれば、最初に買手側から、

  • なぜこの会社に興味を持ったのか
  • どのような目的で買収を検討しているのか
  • トップ面談で何を確認したいのか

を説明するのが自然です。

もちろん、面談の進め方に絶対的な決まりがあるわけではありません。ただし、買手側が最初に関心を持った理由や検討の背景を説明すれば、売手も相手の意図を理解したうえで話すことができます。

トップ面談は、売手が一方的に自社を説明する場ではありません。まず買手側が面談を希望した理由を示し、そのうえで双方が必要なことを話し合うことで、面談の目的が明確になり、より有意義な話し合いにつながります。

トップ面談に「必ず何回実施しなければならない」という決まりはありません。1回で十分なこともあれば、必要に応じて2回以上行うこともあります。

一般的には、対面でのトップ面談は1回で終わるケースが多いでしょう。しかし、面談後に新たな疑問や確認事項が出てくることもあります。

大切なのは、形式的に回数を決めることではなく、売手が納得して買手候補を選べるまで、必要な話し合いを行うことです。

意向表明の前後に追加面談を行うこともある

会社売却2.0

最初のトップ面談を終えた後、売手側に追加で確認したいことが出てくる場合があります。

たとえば、次のような内容です。

  • 買収後の経営方針に問題はないか
  • 従業員の雇用をどのように考えているか
  • 売手が希望する条件を受け入れられるか
  • 面談で聞いた話に認識のズレはないか

このような場合は、買手候補にもう一度来てもらうこともあれば、売手が買手企業を訪問することもあります。内容によっては、Zoomなどを利用したオンライン面談でもよいでしょう。

また、意向表明書を受け取った後、どの買手候補を選ぶか最終判断するために、追加面談を行うこともあります。

確認すべきことが残っているのであれば、意向表明の前後にかかわらず、随時話し合うことが大切です。

本気度の高い買手候補とは、もう一度会う価値がある

会社売却2.0

M&Aは、会社の将来に関わる大きな意思決定です。

買手候補の検討意欲が高く、売手側も「この会社なら任せてもよいかもしれない」と感じているのであれば、もう一度面談を設ける価値があります。

M&Aは、会社の将来を左右する大きな意思決定です。一度の面談だけでは、十分に判断できないこともあります。

特に、次のような点は資料だけでは分かりません。

  • 売却後の経営方針
  • 従業員や取引先への向き合い方
  • 意思決定の考え方やスピード
  • 売手企業と買手企業の社風や相性

必要に応じて複数回話し合うことは、売手と買手の双方にとって、M&A成立後の認識のズレを減らすことにつながります。

トップ面談では、事業や条件に関する確認だけでなく、相手の姿勢や検討意欲も確認します。

ただし、「一度会えば相手の人柄を見抜ける」という考え方には注意が必要です。

トップ面談に参加する人は、基本的にきちんとした対応をします。会社の買収を真剣に検討している買手候補であれば、ビジネスの場にふさわしい振る舞いをするのが一般的です。

売手側も同じです。重要なM&Aの初回面談で、わざわざ相手に失礼な対応をする人は多くありません。

そのため、トップ面談で「人柄が良さそうだ」と感じても、それだけで相手の本当の人柄を理解できたとは限りません。実際に確認できるのは、「社会人として礼儀正しく対応できる」「相手に良い印象を与える振る舞いができる」という程度かもしれません。

もちろん、初回面談の時点で明らかに失礼な態度を取る、約束を守らない、相手を尊重しないといった行動があれば、大きな判断材料になります。

一方で、丁寧な対応だったという理由だけで、相手のすべてを信用するのも適切ではありません。

トップ面談で確認したいのは、単純な人柄の良し悪しではありません。重要なのは、売手企業と買手企業の文化や考え方が合うかどうかです。

たとえば、次のような点を見ていきます。

  • 経営に対する考え方
  • 従業員や取引先への向き合い方
  • 意思決定の方法やスピード
  • 売却後に目指す会社の方向性
  • 質問や回答に対する姿勢
  • 売手経営者との会話の相性

これは、買手候補が良い会社か悪い会社かを判断するという話ではありません。

「自社と考え方が合うか」「従業員や取引先を安心して任せられるか」「売却後の方向性に違和感がないか」を確認することが重要です。

売手は買手候補を評価し、買手も売手企業を評価しています。トップ面談は、双方がお互いを見極める場でもあるのです。

トップ面談で見られているのは、買手候補だけではありません。売手側の姿勢も、買手から確認されています。

売手が不誠実な対応をしたり、質問に対して曖昧な回答を繰り返したりすれば、買手候補は不安を感じます。

分からないことを無理に答える必要はありません。その場合は、「現時点では確認できていないため、調べて後日回答します」と正直に伝えればよいのです。

会社売却2.0では、売手側も買手候補に不信感を与えないよう、事前に面談の準備を行います。

必要な情報を整理し、誠意を持って丁寧に伝える。この姿勢が、トップ面談の質と買手候補からの評価を高めます。

会社売却2.0では、売手と買手の立場を明確に分けています。そのため、トップ面談もM&A交渉における重要なステージの一つと考えています。

もちろん、トップ面談のたびに価格交渉をするわけではありません。希望する譲渡条件は事前に提示しているため、面談の場でいきなり「価格を下げてほしい」「価格を上げてほしい」という話になるケースは多くありません。

しかし、必要であれば金額や条件について話すこともあります。「トップ面談では、この話をしてはいけない」と最初から制限する必要はないと考えています。

・後から聞くと複雑になることは、
早めに確認する

M&Aでは、重要なことを後回しにすると、交渉が進んでから話が複雑になる場合があります。

たとえば、次のような内容です。

  • 買収後の経営方針
  • 従業員の雇用や処遇
  • 売手社長の売却後の関与
  • 譲渡価格やその他の条件
  • 引き継ぎの内容と期間
  • 双方が認識しているリスクや懸念点

こうした重要事項は、遠慮して先送りするよりも、必要なタイミングで率直に確認した方がよい場合があります。

トップ面談は、売手と買手が直接話せる貴重な機会です。その場で確認できることはできる限り確認し、双方の誤解や認識のズレを減らすことが重要です。

・丁寧に、誠意を持って踏み込む

会社売却2.0では、トップ面談で必要な話をしっかり行います。ただし、一方的に要求したり、相手を追及したりするわけではありません。

大切なのは、礼儀と誠意を持ち、相手を尊重しながら必要な部分に踏み込むことです。

M&Aは、条件だけで決まるものではありません。売手にとっては、会社や従業員、取引先を誰に託すのかという重要な判断です。買手にとっても、対象会社を引き受け、その将来に責任を持つ大きな意思決定です。

だからこそ、トップ面談を形式的な顔合わせで終わらせてはいけません。双方が納得できるM&Aを実現するために、本当に必要な確認と議論を行うことが大切です。

M&Aのトップ面談は、単なる挨拶や顔合わせの場ではありません。

買手候補は通常、会社概要書を読み、希望する譲渡条件を確認したうえでトップ面談を希望します。そのため、トップ面談はお互いの人柄を確認するだけでなく、今後の経営方針や従業員の処遇、譲渡条件、引き継ぎなどについて、具体的な確認や議論を行う重要なステージです。

会社売却2.0では、売手と買手の立場を明確に分け、売手の立場から買手候補と向き合います。売手の判断に必要であれば踏み込んだ質問を行い、買手候補にも、気になることや聞きにくいことを率直に確認してもらいます。

一方、売手と買手の双方を支援するM&A仲介会社では、トップ面談を「まずは関係をつくる場」と捉え、細かな条件交渉を控えるケースもあります。

どちらの進め方が絶対に正しいということではありません。

大切なのは、形式や慣習にとらわれることではなく、売手経営者が会社や従業員、取引先を安心して託せる相手かどうかを見極めることです。

トップ面談で本当に必要なことを確認し、納得できるまで話し合う。それが、売却後に後悔しない判断につながります。

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