株式会社社長の専門学校
『会社売却2.0/
М&Aセルサイドアドバイザー協会』
代表 田中英司(たなかえいじ)
- M&Aのプロアドバイザーかつ現役経営者。
- ゼロから創業した会社を上場させ、買手・売手の両方を社長として経験。
- 上場企業を引き継いだ後、複数社の会社を経営。
- M&Aアドバイザーとしても、年商数千万~数十億のM&Aを成功に導く。
昨年ニュースで気になった発表がありました。クオールホールディングス株式会社の連結子会社であるクオール株式会社が、2025年10月29日付で、ある会社が運営する薬局8店舗を譲り受ける事業譲渡契約を締結した、という内容です。
今回はこの例を参考に、業界再編やロールアップ投資について解説していきます。売り手オーナー様にとってチャンスでもあります。ぜひご覧ください。
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目次
売り手はチャンス?
ロールアップ投資について
M&Aの事例から解説
1.なぜ大手が小規模「8店舗」を買うのか?
クオール株式会社は業界3位くらいのポジションにいる大手です。
店舗数はおおよそ950店舗、売上は約1,650億円という規模感だとされています。この規模の会社が、全体から見ると少ない8店舗を譲り受けました。
この背景には、調剤薬局業界の構造があります。
調剤薬局業界はなぜ再編が起きやすいのか
調剤薬局の世界は、そもそも「医薬分業」という流れの中で広がってきました。
昔は病院の中で薬が出ていた時代もありましたが、医薬分業が進んで「医師は医療に専念し、薬は外で受け取る」という形になった。そうすると病院の近くに薬局が出店し、いろいろな事業者が生まれていきます。
ところが、その後は環境が変わっていきます。
- 薬価が下がっていく流れが出てきた
- さらにAmazonのように、ネットで薬を売る流れも出てきた
- こうした変化の中で、業界が成熟していった
成熟してくると、次に起きるのが再編です。薬局が統合されていき、結果的に大手へ集約される流れが強くなっていきました。
成長期は会社が増え、成熟期は統合が進む
これは調剤薬局に限らず、日本の多くの業界で起きている構造です。
成長期には、いろいろな会社が生まれます。
でも安定期に入って成熟してくると、今度は統合されていく。
分かりやすい例として、携帯電話の業界があります。結果として3社ほどになりそこまで激しい競争になりにくく、料金も高止まりしやすい構造になっています。そこにメスを入れようとして楽天が参入し、当時の菅政権と組んでやったと言われていますが、現実にはなかなか簡単ではありません。
つまり「どこまで統合されるか」は別としても、成熟した業界では3社〜5社くらいに集約されていくような動きが起きやすい、ということです。
調剤薬局も同じで、ここ7〜8年くらい前からM&Aがどんどん起きてきました。ある意味、M&Aがものすごく激しい業界だったと言えます。その延長線上で、いまは少し落ち着いてきました。

ここで大事なのが「ロールアップ投資」という考え方です。
では、950店舗も持っている会社が、なぜ規模感からすると少数の8店舗を買うのか。
ここで知って頂きたいのが「ロールアップ投資」です。ロールアップ投資というのは、簡単に言うと、大きな会社が、小さな塊を取り込んでいく考え方です。たとえば、あるファンドがまずは何百店舗という大きな塊を買ったとします。そして次の段階で、同じエリアにある1店舗や少数店舗を買っていくことがあります。
なぜなら、買えるような「大きな塊」はだんだん減っていきますので、だんだんと、近場の少数の塊を取り込んでいこうという考えになるからです。
今回も、そのような流れでの取り組みだった可能性があります。
小規模な会社や店舗にも、売却のチャンスはあります。
小さくても売れる理由がある
小規模な会社や店舗にも、売却のチャンスはあります。その理由として、ぜひ知っておいていただきたいのが「ロールアップ投資」という考え方です。
「規模が小さいから売れない」と決めつけるのではなく、大手やファンドにとって“取り込みたい対象かどうか”という視点で見ることが大切です。
実際に、小規模でも買収されるケースは少なくありません。
その背景には、大きな会社が小さな事業を積み上げていくロールアップ投資の戦略があります。
この視点を持つだけで、売却の可能性の見え方は大きく変わります。

2.なぜ株式譲渡ではなく事業譲渡をしたのか?

今回は事業譲渡という形で譲り受けられました。なぜ株式譲渡ではなく事業譲渡をしたのか?
ここで、事業譲渡と株式譲渡について、売り手の目線と、買い手の目線で解説したいと思います。
同じ取引でも、どちらの立場で見るかで「得か損か」「やりやすいか」が変わってきます。
売り手目線:一般的には事業譲渡のほうが損になることが多い
売り手側からすると、一般論としては事業譲渡のほうが損になるケースが多いです。
会社ごと売る場合、オーナー様は自分の株式を売ることになります。これは株式譲渡なので、税金は基本的に譲渡益に対して20.315%です。
最近は高額層への上乗せ課税の議論などもありますが、少なくとも「ここでの前提」としては、10億円くらいまでなら大きくは変わらず20.315%と考えてください。たとえば、仮に10億円で株式を売ったとすると、単純計算で約2億円が税金になります。
売り手目線:事業譲渡は「会社にお金が入る」ので税率が重くなりやすい
一方で事業譲渡の場合は、会社自体は残っていて、今回は「8店舗の事業」を切り出して譲渡する形です。
この場合、譲渡代金は会社に入ります。つまり会社にとっては収益になり、扱いとしては益金(収益)として計上され、そこに法人税・法人住民税がかかります。税率としては、ざっくり35%〜40%のレンジになりやすい。
もちろん、譲渡益は「譲渡対価」から「簿価(元の取得価額)」を引いた金額なので、ケースによっては20%を下回ることもあり得ます。ただ、総じて見ると、会社に利益が残って法人税がかかるため、株式譲渡より税負担が重くなることが多くなります。
だから売り手からすると、「どっちを選ぶか」と言われたら、一般論では株式譲渡を選ぶケースが多い、という整理になります。
売り手目線👉 一般的には株式譲渡の方が有利
- 株式譲渡:税率 約20.315%
- 事業譲渡:法人課税(約35〜40%)
買い手目線:事業譲渡は「会社のリスクを背負わない」ためのリスクヘッジになる
では、買い手側の目線から見てみましょう。買い手からすると、事業譲渡にすると会社ごと引き受けなくて済む。つまり、過去の簿外債務や想定外のトラブルなど、会社に紐づくリスクを丸ごと抱えずにすみます。
このリスクヘッジが、事業譲渡が選ばれる大きな理由だと思います。
ただし買い手にも手間がある:株式譲渡のほうが手続きはラク
とはいえ、買い手にとって事業譲渡は面倒も増えます。
株式譲渡なら、基本は「株主が変わりました」「代表者が変わりました」といった名義の変更・通知・承諾で済むことが多く、手続きは比較的シンプルです。従業員もその会社に在籍したままなので、基本的に「退職して雇い直す」ことは起きません。
一方、事業譲渡だと、原則として
・従業員は一旦その会社を退職して
・譲受側で新たに雇用契約を結び直す
という段取りになります。 さらに、8店舗それぞれについて、契約関係も巻き直しになります。
買い手目線👉 リスク回避のため事業譲渡が選ばれることも多い
- 事業譲渡:リスクを切り離せる
- 株式譲渡:手続きが簡単

3.契約締結から譲渡実行まで2か月空ける理由

事業譲渡で注意すべき実務ポイントについて
今回の発表だと、10月29日に譲渡契約を締結して、譲渡実行日は1月1日という形で、2か月ほど空いています。
事業譲渡では以下が発生します。
- 従業員の再雇用手続き
- 行政手続き(許認可や届出など)
- 賃貸借契約の巻き直し
行政手続きについて、買い手がクオールさんクラスの場合は、必要な手続きを踏めば問題無く1か月程度あれば対応できると思います。
特に重要なのが「賃貸借契約」です。貸主の承諾が得られないと、取引自体が成立しない可能性もあります。たとえば、COC条項に抵触しないかというのは気になるところです。

4.プレスリリースを
早い段階で出すことの
リスク

売り手目線で見ると、少し気になる点があります。
今回のケースは問題なく進む可能性が高いと思いますが、契約締結の段階でプレスリリースを出してしまうと、その後に「やはり成立しない」となるリスクもゼロではありません。
もちろん、開示ルール上、このタイミングで発表が必要であれば従うしかありません。
ただし、今回のように「8店舗の譲受」という規模で、どこまで開示が必要だったのかは一つの論点です。
実際に金額の詳細も開示されていないことから、必須ではなかった可能性も考えられます。
そのため、売り手の負担や不安を考えると、「譲渡が完了してから発表する」という形の方が望ましい場合もあります。
売り手としては、契約段階での公表は心理的な負担になることも多く、できれば慎重にタイミングを検討したいポイントです。
調剤薬局M&Aの今後と他業界での再編
調剤薬局のM&Aは、今後もニュースで出てくる可能性は高いと思います。
「調剤薬局の大型M&Aはもう終わった」という見方もありますが、実際にはまだ業界7位・8位クラスのプレイヤーも残っています。ですから、再編はまだ進むはずです。
再編が起きているのは、ほぼ全ての業界
では、こうした再編はどんな業界で起きているのか。結論としては、ほぼ全ての業界だと思います。
M&Aが増える理由にはいろいろありますが、その一つが後継者不足です。
そしてもう一つ重要なのが、成熟した業界が多い、という点です。
成熟した業界が多いからこそ、そこでの再編が起きる。この2つが掛け算になって、M&Aが増えている、と理解すると分かりやすいです。
つまり、この事例は薬局業界に限った話ではありません。「自分は薬局業界じゃないから関係ない」と切り離すのではなく、成長している一部の業界を除けば、今まさに多くの業界で同じことが起きている、という前提で見ていただくといいと思います。
この事例は十分に参考になる事例です。

5.売り手の立場として気を付けるべき点

売り手の立場で考えると、今回のケースでは気を付けるべき点がいくつもあります。
- なぜ事業譲渡になったのか
- 税制面でオーナーさんが損をしていないのか
- プレスリリースのタイミングや内容は納得できる形か
大手相手でも、売り手は交渉すべきです。
取引の形は一つだけではありません。両者の事情を踏まえて決まっていきます。
だからこそ大事なのは、相手が大手であっても、売り手は売り手として交渉すべき点をきちんと交渉することです。
税制面、開示のタイミング、事業譲渡か株式譲渡かなど、こうした論点がしっかり検討された上で、「これがベターな答えだ」と腹落ちする選択をして欲しいです。ここを強くお願いしたいと思います。

6.業界再編は
売り手オーナーにとって
M&Aのチャンス
再編期は「売り時」でもあります。
業界の再編が進む局面というのは、売り手オーナーにとってはチャンスと考えていいでしょう。
今回の「8店舗」も、おそらくそれなりに良い店舗群だったのではないでしょうか。そうであれば、売却先は「業界3位」だけに限りません。状況によっては、2位に売れるかもしれないし、場合によっては1位に売れる可能性だってあります。
たとえば今回のエリアは確か横浜だったと思いますが、他の大手よりもクオールさんのほうが、そのエリアでの自社店舗が少なく、店舗を追加しやすい状況だったからこそ、買いやすかった可能性もあります。
こういう事情は、実はよくあります。M&Aは「会社の良し悪し」だけで決まるのではなく、買い手側の出店状況や戦略で、相性が大きく変わります。
高く売るために重要な視点について

大手が買いたい、興味を示す点はどこか?
売り手として意識すべきは、
- 買い手のエリア戦略
- 店舗分布
- シェア競争の状況
👉 「どこが一番欲しがるか」を考えること
そして、
👉 候補はできるだけ広く当たること が重要です。
今回も、結果としてそういう形に落ち着いたのかもしれません。
売り手としては「売り方」もしっかり検討した上で進めて頂ければと思います。
再編が起きている局面は、買い手同士が「取り合っている」タイミング
この話は調剤薬局に限らず、他の業界でも同じです。
再編が起きている局面というのは、見方によっては、買い手が取り合いをしているタイミングです。ある意味、シェア競争をしているわけです。
買い手も予算を組みやすい状況です。売り手としては「一番いい時に売る」というのが合理的になります。
そのために、皆さまそれぞれの業界で、今どういう動きが起きているのかをよく研究してほしいと思います。
候補はできるだけ広く取り、比較して進める
そして、条件を良くするには、できるだけ多くの買い手候補に当たることが大切です。
たくさんの買い手を候補として挙げて、比較しながら進めてください。
これが、より良い条件を引き出すための一つの基本方針になります。

7.まとめ
今回は、調剤薬局の再編の流れの中で起きた、最近のM&A事例を取り上げました。

今回の話で、ぜひ覚えていただきたい言葉が「ロールアップ」です。
大手が少数店舗を譲り受ける動きには、業界の成熟と再編の流れが背景にあります。こうしたニュースは、調剤薬局に限らず、他の多くの業界でも同じように起きています。
ぜひ覚えていただきたい言葉がロールアップです。
事実として、小さい会社は売りにくいです。
しかし、そこにロールアップ投資という概念を当てはめることで、「小さくても買われる理由」が成立するケースがあります。
規模が小さいからといって、最初から売れないと決めつけるのではなく、誰にとってロールアップの対象になり得るかという視点を持つだけで、戦い方が変わります。
もう一つ重要なのが、会社譲渡(株式譲渡)と事業譲渡の違いです。
この違いは、税金・手続き・リスクの背負い方に影響します。
そして、売り手にとっては最終的に手取りにも影響します。
大きく変わるので、ぜひ勉強していただきたいと思います。

会社売却でお悩みなら
ぜひご相談ください。
会社を売ろうとすると、いろいろな仲介会社が営業に来ます。
一社の話だけで決めないことが大切です。
しっかり研究して頂き、ご自身が腹落ちしたやり方で進めていただきたい。ここを強くお願いしたいと思います。
会社売却でお悩みなら、
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他社様とも比較していただいて
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