会社・事業を売りたい時に損しない5か条とは?会社売却成功の方程式

株式会社社長の専門学校
『会社売却2.0/
М&Aセルサイドアドバイザー協会』
代表 田中英司(たなかえいじ)

  • M&Aのプロアドバイザーかつ現役経営者。
  • ゼロから創業した会社を上場させ、買手・売手の両方を社長として経験。
  • 上場企業を引き継いだ後、複数社の会社を経営。
  • M&Aアドバイザーとしても、年商数千万~数十億のM&Aを成功に導く。

会社を売却する際、売手オーナーが「できるだけ高く、できるだけ良い条件で譲渡したい」と考えるのは当然です。

しかし、M&Aの進め方を間違えると、本来得られたはずの譲渡価格を下げられてしまったり、条件交渉で不利になったり、契約段階で売手にとって重い責任を負ってしまったりする可能性があります。

株式譲渡で売手が損をしないためには、単に「高く買ってくれる会社を探す」だけでは不十分です。企業概要書の作り方、買手候補への当たり方、意向表明の集め方、独占交渉先の選び方、そして株式譲渡契約書の確認まで、プロセスごとに押さえるべきポイントがあります。

この記事では、売手経営者が株式譲渡で損をしないための進め方を、5つの実務ポイントに分けて解説します。

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会社・事業を売りたい時に損しない5か条とは?

会社売却成功の
方程式

会社・事業を売るときに
損をしないための5か条

会社売却を成功させるためには、価格交渉だけに注目するのではなく、M&Aのプロセス全体を売手の立場で設計することが重要です。

特に大切なのは、次の5つです。

  • 第1条 企業概要書の精度を高める
  • 第2条 できるだけ多くの買手候補へアプローチする
  • 第3条 多くの意向表明書を集める
  • 第4条 最適な買手を選び、独占交渉に入る
  • 第5条 株式譲渡契約書を売手の立場で確認する

どれか一つだけが重要なのではありません。

企業概要書の作成~契約書の締結まで、それぞれの段階で売手に不利な状況を作らないことが、会社売却を成功させるポイントです。

会社売却2.0

企業概要書は、買手候補が会社を理解し、買収を検討するための最も重要な資料です。

この内容が不十分だと、デューデリジェンス(買収監査)の段階で新たな問題が見つかり、「聞いていた話と違う」という理由で譲渡価格の引き下げにつながる可能性があります。

ネガティブ情報も
最初に開示する

企業概要書では、会社の良い面だけではなく、リスクや課題についても正しく開示することが大切です。

ネガティブな情報を隠したまま進めると、デューデリジェンスで初めて問題が見つかり、買手にとっては「マイナスのサプライズ」になり、

「事前に想定していなかったリスクが見つかったため、譲渡価格を見直したい」

という減額交渉につながりやすくなります。

逆に、最初からリスクを開示したうえで意向表明や基本合意を行えば、そのリスクは買手も織り込んだ状態で交渉を進めることになります。

その結果、デューデリジェンス後の価格交渉を防ぎやすくなります。

強みだけでなく
リスクも整理する

企業概要書では、自社の強みをしっかり伝えることはもちろん重要です。

しかし、強みばかりを並べてリスクを伏せてしまうと、後から問題が見つかったときに買手の信頼を失う原因になります。

売手にとって大切なのは、

  • 会社の強み
  • 注意すべきリスク
  • そのリスクへの対応状況

まで整理したうえで、買手が適正に評価できる資料を作ることです。

新店舗や新規事業の利益は
別枠で説明する

例えば、決算後に新店舗を出店し、順調に売上が伸びているケースがあります。

募集活動の時点では店舗は営業しているものの、まだ1年経過していないため、決算書の利益には十分反映されていません。

このような場合は、企業概要書の中で別枠として、

  • 現在の売上・利益の状況
  • 1年間営業した場合の利益見込み
  • その利益を反映した場合のEBITDA

などを記載しておくことが有効です。

もちろん、実績と予測は混同しないよう明確に区別し、「将来予測」であることを明記する必要があります。

わずかな記載で
会社の評価が変わることもある

このような補足情報があるかどうかで、買手が感じる企業価値は大きく変わることがあります。

例えば、実績EBITDAだけを見ると割高に感じる会社でも、新店舗の利益見込みを考慮すると、評価倍率はそれほど高く見えなくなることがあります。

実際には、将来利益を適切に説明したことで、実績EBITDAに対して約15%程度プラスの評価につながるケースもあります。

もちろん、将来予測を買手がそのまま評価するとは限りません。

しかし、何も記載しなければ、その価値は評価の対象にもなりません。

だからこそ、企業概要書では、

  • 強みを伝える
  • リスクも開示する
  • 評価の基礎となる数字を整理する
  • 将来の成長要素を根拠を持って示す

    ことが重要です。

これらを丁寧にまとめることで、会社の本来の価値を買手に正しく伝えられ、売手が損をしない会社売却につながります。

2つ目に重要なのは、できるだけ多くの買手候補にアプローチできる仕組みを作ることです。

M&Aでは、買手候補の数を増やせば必ず良い条件で売却できるわけではありません。しかし、一定以上の母数にアプローチすることで、自社を高く評価してくれる買手や、相性の良い買手に出会える可能性は高まります。

・買手候補の母数が少ないと選択肢が限られる

1社や数社だけに打診しても、良い条件が提示されるとは限りません。

売手にとって理想的なのは、自社の事業を高く評価し、買収後のシナジーを感じ、譲渡価格や条件面でも前向きに検討してくれる買手です。

しかし、そのような買手が最初から簡単に見つかるとは限りません。

だからこそ、最初から買手候補を絞りすぎず、できるだけ多くの候補にアプローチできる環境を作ることが重要です。

・複数の仲介会社を活用してロングリストを広げる

会社売却2.0では、中堅・大手を含む複数のM&A仲介会社と連携しながら、買手候補を広く探す仕組みを取っています。

1社の仲介会社だけで買手を探すよりも、複数の仲介会社に協力してもらうことで、それぞれが持つネットワークを活用でき、買手候補のロングリストを大きく広げることができます。

一定規模以上の案件であれば、7社、8社、多い場合には30社、40社の仲介会社に協力してもらい、それぞれのネットワークを通じて買手候補を探すこともあります。

例えば、300社の候補だけに当たるよりも、数千社規模のロングリストの中から買手候補を探した方が、自社を高く評価してくれる買手に出会える可能性は高まります。

大切なのは、「誰が買ってくれるか」を探すだけではなく、「誰が最も高く評価してくれるか」を探せる環境を作ることです。

情報漏洩に注意しながら進める

一方で、多くの買手候補にアプローチする場合には、情報漏洩にも十分注意しなければなりません。

会社を売却しようとしていることが従業員や取引先、金融機関などに不用意に伝わると、会社の信用や事業運営に影響する可能性があります。

そのため、買手候補を広く探す場合でも、会社名を伏せたノンネーム資料を活用するなど、情報管理を徹底しながら進めることが重要です。

ただ闇雲に情報を広げるのではなく、秘密保持に十分配慮しながら、より多くの有力な買手候補にアプローチできる体制を作ることがポイントです。

売手のために買手を探す仕組みが重要

一般的なM&A仲介では、同じ仲介会社が売手と買手の双方を支援するケースがあります。

一方、売手が損をしない会社売却を目指すのであれば、売手の立場から、できるだけ多くの買手候補を探せる仕組みを作ることが重要です。

売手は1社ですが、買手候補は多数存在します。

多くの買手候補にアプローチし、その中から価格や条件、相性などを比較できる状態を作ることで、売手はより良い相手を選びやすくなります。

「少ない候補の中から売る相手を決める」のではなく、「多くの候補の中から最も良い買手を選ぶ」。

この環境を作ることが、売手にとって納得できる会社売却を実現するための重要なポイントです。

3つ目に重要なのは、できるだけ多くの買手候補から意向表明書を受け取ることです。

これは、2つ目の「多くの買手候補に当たる仕組みを作る」ことの延長線上にあります。

多くの買手候補にアプローチし、その中から自社に関心を持つ会社とトップ面談などを行い、最終的に複数の買手候補から意向表明書を受け取る。

このような状態を作ることで、買手候補を比較できるようになり、売手にとって有利な交渉を進めやすくなります。

・すべての会社に多くの意向表明が集まるわけではない

もちろん、すべての会社に多くの意向表明が集まるわけではありません。

業績の良い会社であっても、事業内容が特殊であったり、買手候補が限られる業界であったりすると、想定していたほど意向表明が集まらないこともあります。

実際に、複数の意向表明を受け取ることが難しいケースもあります。

一方で、買手からの関心が高い会社であれば、10社近い買手候補から意向表明が出てくることもあります。

大切なのは、必ず多くの意向表明を集めることではなく、できるだけ多くの買手候補に検討してもらい、複数の選択肢を作る努力をすることです。

・複数の意向表明が競争環境を作る

複数の買手候補から意向表明書を受け取ることができれば、買手候補同士の競争環境が生まれます。

売手は、1社の条件だけを受け入れるのではなく、複数の買手候補が提示する条件を比較できるようになります。

比較するのは、譲渡価格だけではありません。

例えば、

  • 譲渡価格
  • 従業員の処遇
  • 取引先との関係維持
  • 経営者の引継ぎ条件
  • 譲渡後の経営者の関与
  • 表明保証や補償の条件

など、さまざまな条件を比較できます。

複数の買手候補が競争する環境を作ることで、価格だけでなく、売手が重視する条件についても、より良い提案を引き出しやすくなります。

・良い条件を引き出してから独占交渉に入る

複数の意向表明書を受け取った後は、それぞれの条件を比較し、売手にとって最も良い買手候補を選びます。

ここで重要なのは、単純に「最も高い金額を提示した会社」を選べばよいわけではないということです。

譲渡価格はもちろん重要ですが、従業員や取引先への対応、売却後の経営方針、経営者の引継ぎ条件なども含めて総合的に判断する必要があります。

そして、売手が希望する条件をできる限り明確にしたうえで、最も条件の合う買手候補を選び、独占交渉に入ります。

「1社と交渉して条件を受け入れる」のではなく、「複数の意向表明を比較し、より良い条件を引き出してから1社を選ぶ」。

この競争環境を作ることが、売手が損をしないM&Aを実現するための重要なポイントです。

4つ目に重要なのは、複数の買手候補の中から、最も良い買手を選んで独占交渉に入ることです。

複数の意向表明書を受け取ることができても、最終的にどの買手と独占交渉に入るかを間違えると、その後の交渉がうまく進まなかったり、条件が悪くなったりする可能性があります。

一度、特定の買手と独占交渉に入ると、基本的には他の買手候補との交渉を止めることになります。

・良い買手を見極めるポイントはある

どの買手が本当に良い相手なのかを、100%確実に見極めることは簡単ではありません。

しかし、トップ面談での姿勢や条件提示の内容を見ることで、ある程度は判断できます。

もちろん、良い条件を提示してくれることは重要です。

それに加えて、トップ面談に最終決裁者、あるいは最終決裁者に近い立場の人が参加しているかどうかも重要なポイントです。

決裁者に近い人が自ら面談に参加している場合、その案件に対する関心度や本気度が高い可能性があります。

トップ面談では、単に話の内容を聞くだけでなく、**「誰が参加しているのか」「どのような姿勢で話を聞いているのか」**まで見ることが大切です。

・トップ面談では買手の本気度を見る

買手候補の本気度は、トップ面談での言葉や態度にも表れます。

例えば、トップ面談が終わり、意向表明書の提出期限や記載してほしい条件を伝えた際に、買手のトップが売手オーナーに対して、

「ぜひ意向表明を出させていただきたいと思います。金額についても最大限検討しますので、よろしくお願いします」

と明確に意思を伝えてくれることがあります。

さらに、「なぜこの会社を買収したいのか」「買収後にどのようなシナジーが生まれるのか」まで具体的に説明できる買手であれば、その会社に対する本気度は高いと考えられます。

もちろん、毎回このような買手が現れるとは限りません。

しかし、

  • 面談での姿勢
  • 最終決裁者の関与度
  • 買収に対する本気度
  • シナジーの具体性
  • 意向表明書の条件

などを総合的に見ることで、独占交渉に進むべき買手を判断しやすくなります。

・金額だけでなく、シナジーや相性も見る

売手にとって、譲渡価格は非常に重要な判断基準です。

しかし、金額だけで買手を選ぶと、その後のデューデリジェンスや最終契約の交渉で苦労することがあります。

そのため、

  • 本当にこの会社を必要としているのか
  • 買収後に事業を伸ばせるシナジーがあるのか
  • 従業員や取引先を大切にしてくれるのか
  • 売手オーナーの希望を理解してくれるのか
  • 最終契約まで誠実に交渉を進めてくれるのか

といった点も確認する必要があります。

「最も高い金額を提示した買手」だけで判断するのではなく、「最終的に安心して会社を任せられる買手か」という視点も大切です。

価格や条件、本気度、シナジー、相性などを総合的に比較し、最も良い買手を選んで独占交渉に入ることが、売手が損をしないM&Aを実現するための重要なポイントです。

最後に重要なのが、株式譲渡契約書を売手の立場でしっかり確認することです。

株式譲渡契約書は、M&Aの最終段階で売手と買手が締結する非常に重要な契約書です。

それまで良い条件で交渉が進んでいたとしても、最後の契約書で売手に不利な条項を見落としてしまうと、会社を譲渡した後に思わぬ責任やリスクを負う可能性があります。

だからこそ、契約書に押印する前に、売手の立場から内容を十分に確認することが重要です。

・売手側に弁護士がいない状態は望ましくない

株式譲渡契約書を締結する際、売手側に専門の弁護士がいないケースがあります。

買手側には、買手の利益を守るための弁護士がついている。

仲介会社にも、M&A全体を円滑に進めるために契約書を確認する弁護士がいる。

しかし、売手だけが、自分の立場で契約書を確認してくれる弁護士をつけていない。

このようなケースは決して珍しくありません。

しかし、売手にとっては不利な状況になる可能性があります。

・仲介会社の確認だけでは売手の利益を守りきれない

M&A仲介会社は、売手と買手の間に入り、M&A全体を円滑に進める役割を担います。

契約書の内容を確認することはあっても、必ずしも売手だけの利益を守る立場ではありません。

一方、買手側の弁護士は、当然ながら買手の立場から契約書を確認します。

そのため、売手側が専門家をつけずに契約交渉を進めると、

  • 表明保証の範囲や期間
  • 損害が発生した場合の補償責任
  • 契約の解除条件
  • クロージングまでの誓約事項
  • 個人保証の解除
  • 競業避止義務

などについて、売手に不利な条件を見落としてしまう可能性があります。

特に株式譲渡契約書は、会社を売却した後の売手の責任にも関わるため、慎重な確認が必要です。

・売手の立場に立つ弁護士に確認してもらう

「株式譲渡契約書」は、売手の立場で契約内容を確認してくれる弁護士に見てもらうことが重要です。

買手側の弁護士でもなく、M&A全体を見る立場でもなく、売手の利益を守るために契約書を確認し、必要に応じて修正を求めてくれる弁護士です。

これは決して特別なことではありません。

長年経営してきた大切な会社を譲渡する以上、最後の契約内容まで売手の立場で確認することは、会社売却における重要なリスク管理です。

良い買手を見つけ、良い条件を引き出すことができても、最後の契約書で不利な条件を受け入れてしまっては意味がありません。

株式譲渡契約書を売手の立場で十分に確認し、必要な修正交渉を行ったうえで契約を締結する。

これが、売手が損をしないM&Aを実現するための最後の重要なポイントです。

まとめ

株式譲渡で売手経営者が損をしないためには、M&Aの各プロセスで、売手が不利にならないように進めることが重要です。

今回お伝えしたポイントは、大きく5つあります。

1つ目は、企業概要書の精度を高めることです。
会社の強みだけでなく、リスクについても適切に開示し、買手が企業価値を評価するための基礎数字を丁寧に整理します。新店舗や新規事業など、今後の利益が見込める場合には、実績値と予測値を明確に分けたうえで、根拠とともに示すことも大切です。

2つ目は、多くの買手候補にアプローチできる仕組みを作ることです。
限られた買手候補の中から売却先を決めるのではなく、複数のネットワークを活用し、情報管理を徹底しながら幅広く買手候補を探します。

3つ目は、できるだけ多くの意向表明書を受け取ることです。
複数の買手候補から意向表明書を受け取ることで競争環境が生まれ、譲渡価格だけでなく、さまざまな条件を比較できるようになります。その結果、売手にとってより良い条件を引き出しやすくなります。

4つ目は、最も良い買手を選んで独占交渉に入ることです。
単純に最も高い金額を提示した買手を選ぶのではなく、買収に対する本気度やシナジー、決裁者の関与、売手の希望条件への理解などを総合的に見て判断します。最終的に安心して会社を任せられる相手かどうかという視点も重要です。

5つ目は、株式譲渡契約書を売手の立場で確認することです。
良い買手を見つけ、良い条件を引き出すことができても、最後の契約書で不利な条件を受け入れてしまっては意味がありません。売手の立場に立つ弁護士に契約書を確認してもらい、必要な修正交渉を行ったうえで契約を締結することが大切です。

このように、会社売却は「良い買手を見つければ成功」という単純なものではありません。

企業概要書をしっかり作る。多くの買手候補を探す。複数の意向表明を集める。その中から最適な買手を選ぶ。そして、最後の契約書まで売手の立場で確認する。

この5つのプロセスを一つひとつ丁寧に進めることが、売手が損をしない会社売却につながります。

会社売却2.0では、売手経営者が納得できるM&Aを実現するために、売手の立場に立った支援を行っています。オンラインでの対応も可能なため、全国の経営者様からご相談いただけます。

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